フィラデルフィアの夜に 45 - B-REVIEW
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フィラデルフィアの夜に 45    

フィラデルフィアの夜に、針金が弾けます。  もう真っ暗になった街中。 その一角にある廃屋を壊すため、重機がゆっくりと進んでいきます。 本当なら作業をすることのない時間、延々と続いたトラブルのためにこんなにまで遅い時間になってしまいました。 明日に延期されるはずが、作業員も現場監督も役人も警察官も野次馬までもがらんらんと目が輝き、必要以上にライトが燃え上がるばかりに照らされ、壊される廃屋が夜の中浮き上がります。  鉄球。 それを吊るしたクレーン。 真夜中の街にあるまじき轟音を立てて、廃屋を突き崩しました。  その刹那、光が弾けたのです。  光が弾けた。 それは廃屋の破壊された部位から。 そこから白く輝く光線が踊る様にのたうちながら、廃屋の木材から出てくる。  同時に人々が殺到した。 規制線を押しのけ、作業員も警察も野次馬もその光に向かって走り出す。 廃屋からは焚きあげられたライトよりもまばゆい光が溢れに溢れ、人々は夜行昆虫の如く殺到し続ける。  廃屋からの光が、ついに人々に触れた。  その時、人々の頭から体から、光る線が飛び出したのです。  その場にいた全ての人々の頭から体から、線が飛び出したその瞬間。 パン  光がまばゆく弾け飛びました。この世から影と闇が消えたと思える程。 そして光が消えました。 もう真っ暗です。  何も見えません。 あれだけ光にまみれたのです。目は夜を拒否し、何も見えなくなっていました。 燃え上がるばかりのライトも、廃屋の光も、人々の頭から体から出てきた光の線も消え、それどころか周囲のあらゆる光が失われていました。 携帯電話の電源も切れ、街灯も力を失って。  人々は右往左往しながら、警察と作業員の声を耳に捕らえながら、安全な場所まで下がっていきます。 今さっきまで自分が一体何をやっていたのか首を捻りながら。  朝になり、廃屋の木材には奇妙な事に膨大な量の針金が寄生虫が巣食うかのように中に通されていました。 またこの現場にいた,、光る線を頭から体から出した人々の頭と体には木の枝の如く針金が生えて、伸びていました。 病院に行き、また大工道具で頭から体からの針金を切り落としながら、不思議に思い続けます。  この針金がライトに照らされ光輝いていたのでしょう。 それにしてもただただ不思議な夜の出来事でした。


フィラデルフィアの夜に 45 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 6
P V 数 : 627.5
お気に入り数: 1
投票数   : 0
ポイント数 : 0

作成日時 2023-11-24
コメント日時 2023-12-03
#現代詩
項目全期間(2025/04/12現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
可読性00
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音韻00
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閲覧指数:627.5
2025/04/12 03時00分06秒現在
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    作品に書かれた推薦文

フィラデルフィアの夜に 45 コメントセクション

コメント数(6)
A・O・I
作品へ
(2023-12-02)

針金とは思念のこと、からだの中にある形とは別のとても大事な心ですから。と物語詩として。安定して発想がおもしろくよみました。

0
鷹枕可
作品へ
(2023-12-03)

なにとはなしに、アニメーション的抽象‐具象化表現の香気を感受致しました次第でございます(佳い意味です)。 写実的な筆致と、寓話的な筆致。その織り成せる不可思議が夙に強く印象に残りました。 羽田様の作品は、筆力が安定をしておられますので孰れも愉しく、安心をして拝読をさせて頂けますので。重要な書き手の御方の一人でいらっしゃる、と思う事も頻りでございます。 b-reviewには、充分な実力、内容、詩想がお在りに為られながらも、脚光を浴びることの無い作品が多くございます。 其々にレスポンスを致したい心持はございますが、時間と余力が許さず。それでも――総てを総覧している訳ではございませんが―― 愉しみに拝読をさせて頂いております読者が此処にも確かにいる、その事実を伝えたく。 蛇足の程を認めさせて頂きました。 そして、羽田様に於かれましては。何卒下記にお目を通して下さりますと助かります次第でございます。 ――――― 歌誌「帆」より 事務連絡を、失礼致します。 羽田恭様のプロフィール文に付きまして、未だ届いていらっしゃらないとの連絡がございました。 今一度、ご送信の程を宜しくお願いいたしたく存じ上げます。 アドレスは mitzho84@gmail.com でございます。文字数は123文字以内にて収めてくださいます様に、お願いを致します。 何卒、宜しくお願いを申し上げます。

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田中宏輔
田中宏輔
作品へ
(2023-12-03)

奇妙な感じ。

0
羽田恭
鷹枕可さんへ
(2023-12-03)

今月号の科学雑誌ニュートンに生えている朽木を菌糸で青く染め上げる青いキノコと言うのが載っていまして、そこから発想を広げて不思議な方向に行ってしまったのが今回の話になります。 筆力が安定しているとのお言葉、褒めていただき感謝です。 早急にプロフィール文を送付いたします。 送ったと思ったのですが間違いがあったかもしれません。

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羽田恭
A・O・Iさんへ
(2023-12-03)

かなり好き勝手書いてはいますが、独自の世界観を作る事には成功しているようです。 今回は針金が思念が物質として現れたと言えますね。

1
羽田恭
田中宏輔さんへ
(2023-12-03)

奇妙な世界を書き続けている連作ではあります。 しつこく書き続ける所存なので、良ければどうぞ。

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投稿作品数: 1