盲目のひとは
きっと
眼の向こう側へ行ったのだ、
ぬるむ午後、雲の独白に
幾星霜も遅れ
世界はようやくざわめきはじめる、
眼の向こう側とは、
どこにあるのだろう、
わたしの眼窩の底に広がる、
果てなきうるみのかそけさのうちに、
あるいは文机の上、
小さく束ねてある方眼紙らの、
墓標のような無表情のうちに。
刻まれつつ生まれ、
生まれつつ刻まれている、
皺の一つ一つに注がれた
遥かな星雲のペースト。
時限のさざめきを夢見て
春の受容は
夏にまでのびてゆき
よこたわる暗渠
その定性を論駁している
わたしの眼底から無数、
明滅してゆく言葉の
射程は
やがて椚の樹皮を捲ってゆき
古びた詩の
幼虫をこそぐのだ、
わずかによれた針で
あべこべにされた蝉の頭脳をつつくと、
にわかに過去が復元され
束の間賑わい、
ふと巣穴に消えてゆく
(同一律の空洞を這いずりながら
(生きてあることの
(下限のない透明度を弁明するとき
眼の見えるひとは
きっと
眼の中に棲み続ける、
作品データ
コメント数 : 5
P V 数 : 734.4
お気に入り数: 1
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2023-09-26
コメント日時 2023-09-27
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
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閲覧指数:734.4
2024/11/21 19時53分02秒現在
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ある種の蛙は、未来へ向かって匍匐する。 またある種の蛙は、過去へ向かって匍匐する。 欲しいのは真っ黒い月の懐孕だ。
2めちゃくちゃいいですね! 5、6、7連が特にいいです。 耳がいい方なのでしょうか、音の切り方がかっこよすぎる。思わずうっとりします。 内容はかなり難しいですが、硬さと柔らかさが絶妙だと思います。 「同一律の空洞」とか、なかなか素晴らしい詩句。 「下限の透明度」もいい。 期待MAXです。
0この作品ヤバすぎる。。 自分バカなのですみませんが正直詩句の象徴性とか比喩のたくみさは全然わかってないです。でもイメージがぐんぐんなにかを駆動してることが分かる。 なんというかマトリックスだ。マトリックスは緑色の「010001010100101001……」が大量に流れるあのかっこいい演出の元祖だと思ってるのですが、どんなバイナリアンならあれを理解できるんだろう。
0訂正、 ×「下限の透明度」 〇「下限のない透明度」 大変失礼しました。ごめんなさい。
0初読したときにはそうでもなかったんですけれども 二回目読んだのならば、なかなか好みな作品でした。 その、口語自由詩というのが成立したのは、個人的には萩原朔太郎の「青猫」だと 思っており、というのは、今になって読めば「青描」に於いては いっしゅ、語感からもたらされるパルス信号みたいなものがあると。 要は、視覚から過度に感情に入力され減退する、感情運動。 それが「詩情」を分析的といいますか、自分なりにさいきん、言っているのですけれど。 そうすると、次の段階で、そのパルス信号を、要は意図して コントロールできるのではないか、といった作家側の欲望が出てくるわけですね。 それはオートドックスな欲求なのだけれど、この作家もその欲求にふれている。 意識的だと思います。 アドヴァイスとしては、もっと意識的になれますよね、ってそれくらいで 何もアドヴァイスしていないことに、これは等しいのですけれど。 なかなかいいものを読ませていただきました。
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