夕暮れのような色のペンシルをポキンと折って蝉の抜け殻を描いている。尖るようなタイマーの音を優しく揉みほぐすようなダージリンティーの香り、もうすぐ娘が帰宅する時間だ。しかしながらシクラメンの枝が何本も萎れたかのように肩透かしの通販番組がテレビから離れない。犬の鳴き声が聞こえ始める。もう娘が玄関を開けるタイミングだ。庭に植えた球根から芽がでたのと同時に空から自衛隊のヘリコプターが回り始める。までは適切な平穏だった。風が回覧板を飛ばして近所のニートの機嫌を取り繕う。意地悪な末っ子だったのは都合が悪いからだろうか。肉体は常に南東に正面を保ち、キャベツを細かく切っていく。ぼんやりと1日を振り返ってみる。何のことはなかった。何の問題もなかった。ただ気持ちがざわついていただけだった。不安でパニックになってほんの数秒痙攣したりしただけだった。誰もいなかった。見てなかった。必死に商品の安さをアピールする声と電話番号が耳から流れ落ちていく。ゼロ、イチ、ニー、ゼロ、サン、サン、イチ、ニ、サン、イチ、ニ、サン、イチ、ニ、サン、イチ、ニ、サン、イチ、ニ、サン、イチ、ニ、サン、
ペースメーカーを取り出して正常な脈にして欲しいと願う。身も蓋もない。何のことはなかった。何の問題もなかった。ただ気持ちがざわついていただけだった。
作品データ
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作成日時 2023-09-12
コメント日時 2023-09-26
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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2024/11/21 19時58分18秒現在
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ステアされた初々しい愛が 縦長のコリンズグラスに注がれる 細身のジレを着た男は、 水滴を纏った美しい緋色の儚い愛を 「どうぞ」 と言って、ボクの目の前に置いた 冷えたグラスの縁には ライムと淡い声が飾られ、 試しに、唇と舌で触れると 未成熟な、囁く蕾の味がした 泡立つ緋色の愛をそっと口に含むと、 ウォッカと愛の甘さが回転する 緋色を満たしたグラスの底には、 艶かしい声が沈んでいた 微かに震えるグラスへ耳をあてると、 ジレの男が人差し指を立てた そして唇に指を当て、ナイショと示す ああ、確かに。 これは人には言えない
1夕暮れのようなペンシル、その西から、西方浄土を指したり、儚い蝉の抜け殻、脱皮ということを 念頭に置くと、何か死と生の在り方にイントロでそれは既にふれているのかなと思いつつ。 そういう読み方の連続ができない僕は、どこまでも記述された「生活」とその「描写」を 追ってゆくしかできないのですけれど、なかなか親切で、読み応えもありました。 ほんの数秒の痙攣、がやはり肝だと思うんです。 人が不安になったときの、聴覚の在り方も。 そうして、ペースメーカーについてあまり今まで認識してこなかった私がいて やはり無学はいけないなと思った次第です。
0テレパシーによって、世界が完全に保たれているのかな、と思いました。 もしかしたら、全然違うかもしれませんが。 ただ、起きる出来事が、関連しあっている気がしたのです。 ペースメーカーをつけているというのが、不安なのでしょうが、それを含めたテレパシーかな と思いました。
0ただの描写に終わっている詩とは思えませんでした。電話番号が耳から流れ落ちていく場面。カタカナ表記。ペースメーカーの登場は意外でした。そうした予想のつかない展開、アイテムがこの詩を締めていると思いました。
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