冬に届けたあなたへの愛の言葉
追憶はあなたとの対話に変えられてわたしの前に立ちはだかる
残月の夜明けに海が光り水が青く呻く頃
ふたりして歩いた洞窟でわたしたちは貝殻に
秘愛をこめて特別な徴を描いた
洞窟のなかであなたは腕をさしあげて白く震えていた
そして、わたしは貝殻をかき集め永遠の愛をあなたに誓った
あなたは今も覚えているだろうか
わたしの心の底に打つ音があなたに聴かせた愛の言葉を
あなたの想いあふれるばかりの菫色の眼にわたしが火と燃え
頸筋を愛撫して纏っていた時の胸の鼓動の高鳴りは紫色の貝殻に印されている
絹のようなあなたの睫毛のあいだを漏れて
黒ぐろとして流れてくる流し眼も
天鵞絨のごとく波打ち煌めく緑髪も
あなたの耀く胸を飾る縺毛も
桜色の貝殻には描かれている
白い肌の露わなあなたよ
その肢体の美しさ、それは蒼白い濡れた葉むらのように若々しく古代の色彩を帯びていた
美しい耳と、ときおり朱に染まるうなじも白色の貝殻は知っている
貝殻よ、お前にはわたしの愛の徴が刻まれ、消えることはない
窓に映る冷たい雪景色
外には吹雪の霧しか見えない
あなたの記憶と住処のなかでわたしは生きている
その愛は美が風の塵となるその時まで消えることはない
あなたを待つことの驚愕、それはあらゆる嘆きを飽きさせてしまう
愛の深さよ
わたしは神に祈る
海の岸辺に建てられた家でわたしを目覚めさせるあなたの足音を聴くこと
それだけを
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 857.7
お気に入り数: 0
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ポイント数 : 0
作成日時 2023-09-08
コメント日時 2023-09-10
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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2024/11/21 19時32分36秒現在
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めちゃくちゃ正統派耽美!って感じですね。かなり好みの作品です。美しい言葉の数々が上滑りすることなく収まるべきところにかっちりと収まっている感があり、とても洗練された印象を受けます。語られる愛の熱烈さも作品全体にみずみずしさと熱さを与えいていると思いました。
0以前の作で、作者様に、様式美があって、作者様は非常に熱いものを抱いている と評させていただいたのですね。 そうしてこの詩を読みますと、愛というところで、ある種、その様式美が破綻しているので ないか?よれて、こぼれてしまっているのではないかと思ったのですね。 えてして、美学からもれて、かっこ悪いのじゃないのかな、とも思う。 しかし愛とはそういうものだし、そうあって欲しいな、と思ったので、好印象でした。
0私は、割と正統的というか、オーソドックスな詩を書いています。 アクロバティックな書き方もいいかなとは思いますが、私にはあまり向いてないような気がします。 詩は、やはり読者様に気に入って頂くことが作者冥利に尽きます。 これからも、自分の持ち味を生かして詩作をしていきますね。
0この詩は失恋を描いたものですのですが、田中恭平 new様の仰るように、恋愛はそういうものですね。 失恋にも、恋愛成就に劣らない味がありますが、それを劣等感のような形にすると卑俗になってしまいます。 これは、少し不味いことになるかと思い、それは避けるようにしました。 様式美については、もう一つ破綻のひねりがあっても良かったのかなと考えています。
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