またひとつ時が落ちて消えてゆく形象と記憶
白鳩の時代の女性
公園の噴水の上を見上げれば真青な空が
そして白い鳥の群れとオレンジの薫りをはらむ南風
いうにいわれぬあなたの新鮮さ
ぼくは幼かった時、驟雨のあとで
庭の薔薇を揺することが好きだった
あなたはあの薔薇の木だ
まあ、あなた
来たのね
明るい声が言った
そして、ぼくはまだあの頃の少年なのだ
静かな水は風にさざ波を描きだし
あなたの蒼い姿は水につかって
豊穣のしぶきをぼくに浴びせかける
水辺であなたがぼくの凝視にとりかこまれる時
あなたは水よりも透明で緩やかに形を変えるようだ
あなたは前に屈むとその美しい黒髪が
ぼくの膝に水草のような縞を作りだす
ぼくとあなたのあいだに甘い音の時は移ろってゆき
愛の流れにぼくは驚き呆れている
待たせちゃったかしら
長い時だ、ぼくはこの歳になるまであなたを待った
ぼくとあなたは郊外の森に出かけた
晩夏の茂みに優しく光は揺れ
風は婚礼とともに流れている
作品データ
コメント数 : 10
P V 数 : 1060.7
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 14
作成日時 2023-09-01
コメント日時 2023-10-03
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 3 | 3 |
前衛性 | 1 | 1 |
可読性 | 3 | 3 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 2 | 2 |
総合ポイント | 14 | 14 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 3 | 3 |
前衛性 | 1 | 1 |
可読性 | 3 | 3 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 2 | 2 |
総合 | 14 | 14 |
閲覧指数:1060.7
2024/11/21 19時46分02秒現在
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たとえとして伝わるかわかりませんが、2000年代のアニメの画質だなぁと感じました。どこかノスタルジックで切なく、素朴で、鮮やかでもある。見ていて楽しく、読むことが幸福に連なっている。そう言う印象を受けました。
0前作では、確か、その、キラーフレーズがあるにはあるけれど その、埋もれてしまっている、と評したような気がするのですが・・・。 その、今作は塩梅が絶妙で、艶っぽくもある。バランスもいいのかな、と。 ただなんだろう、この作者様には内に秘めた熱いものがあると思うのですけれど その最近、流行りのエモーショナルに至らないのですけれど そういった真の熱さをですね その、安定的な投稿ペースと、ある種の全体を覆う作品美学、から想いました。
0あなたに対する情感がよく出ていると思う。
0この詩を作る時に、アニメは頭になかったのですが、改めて読んでみると、橙色さんの仰るように青春アニメの男女がデートの待ち合わせみたいなところがあるかなと思います。 お読みになった方に、何らかの形で情景が浮かぶとすれば、私の意図したところですので、嬉しいところです。 私は、詩作時にアニメを思い描いたことはありませんでしたが、想像のインスピレーションを得るトリガーになるかと思います。 これからは、詩作において、小説や映画だけではなく、アニメも参考にしますね。
0田中恭平 newさんの仰るように、この作品では、時間(過去から現在)、情景、心情のバランスが上手く取れたかなと思います。 詩作においては理論も重要ですが、最も大切なのは感性です。 粗暴な人は、いくら言葉に注意しても、どこかで表現に齟齬が出てきます。 その点、よくよく留意すべきだと思います。 感動を伝えるためには抑えて書く方がよいなどの技巧はよく聞きますが、必ずしもそれに囚われるべきではないと、私は考えています。 自分を誠実に出すことによって、いいものを書きたいと思います。
1情感描写がこの詩の核ですので、それを感じて頂けたのは良かったです。 まだまだ、私には至らぬところが多いのですが、自分なりに頑張ってみますね。
0すみませんむちゃくちゃ野暮なのでお答えいただかなくても大丈夫なのですが、ハッピーエンドを感じた。。。 watertimeさんの作品はビターな印象がありこの作品も「僕はまだあの頃の〜」で胸が締め付けられる。締め付けられた。でも最後まで読んで良かった。。 どうでも良いと思いますがちょっとだけ自分語りなのですが、会社員生活のやり過ぎで、報告書をたくさん書いてると、報告書脳になります。「静かな水は風にさざ波を描きだす」この一文を読んだときそうだった、日本語にはこういういぶきみたいなものがある、と感じた…………さりげないように思えて、私の頭の中で枕投げになっている国語とは全然別物に感じる ありがとうございます
0文章を書くというのは「慣れ」も必要なところがあって、それは報告書でも書くのと書かないのでは大きな差が出てくると思います。 私も提案書、仕様書、議事録なども含めて基本的には書くことを仕事にしていますが、それは詩作にも役に立っています。 一見、詩とは関係ないようではありますが。 私が多く読むのは小説などの散文であり、詩的ではありませんが、表現は語彙力と密接な関係があり、詩集を読むより小説、哲学書を読んだ方が意外と詩作に役立つような気がします。 この作品は起承転結があり、いすきさんが仰ったようにハッピーエンドとなっていますが、これは小説の多読が功を奏したと考えています。 文章は明晰であることが最も重要だと私は考えていますが、それはもしかしたら報告書がその形なのかもしれません。
0色を転調させて鮮やかにしていく手法が見られるのだけれど、表現が直接的過ぎるので若干のコマ送り感を覚える。もう少し比喩の裏に隠すなどして、色調のイメージを繋ぐグラデーションを上手く色を想像させる別の言葉で繋げたら良かったんじゃないかな。それともう少し風景に含みを持たせることができたら良い。ただ美しいだけのものを描くなら実風景を越えられない。文学には風景に意味を持たせる力があるのだから、せっかく文字表現するのなら、映像的イメージを超えたところを意識して書いてほしいと思った。
0この詩では、少年の頃と今の風景との間の時間を重ねてみました。 ただ、それは直接的なところがあるかもしれませんね。 ゼンメツさんの仰る指摘を実現するのであれば、詩より小説の方がいいかもしれませんね。 あるいは、根本的に書き直す必要があります。 私の詩は、印象派の絵の一瞬のきらめきを捉えている趣きがあり、現代絵画ではないような気がします。 「映像的イメージを超えたところを意識」を実現するのは中々の難作業ですが、現代詩においては重要だと、私も思います。
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