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下弦物語
闇を殺す人は孤独ではない。 いつだって、骨乗り蛍が傍にいて、 足すために生まれてきたような彼の哀しい身体を、 芯から癒し、宇宙で抱いてくれるから。 いつでも、夜が来る前に、蛍は彼を抱きしめて、 それぞれの孤独な部分をジィっと焼き、 心から丁寧に埋め合わせてゆく。 この街のすべての曲がり角に立つ、電信柱の数をかぞえてから、彼は眠る。 蛍は人体標本の骨盤のなかで、眠たそうな光りを小さく明滅させている。 闇を殺す人は、未知なる星の鼓動のような蛍の光りに耳を澄ませ、 ギュッと目蓋を閉じてから、しばらく考えごとをしていた。 それから、急に目を開けて、ソッと蛍へ話しかけた。 「いつか、ぼくが行方不明になったとしても、きみは知らないふりをするのかな? いつも、眠たそうなふりをして、いつだって、眠ってさえいないことを、 ぼくは、もう、知っている」 蛍は黙って、ボンヤリと頷くような光りを放った。 それを見て、やや傷ついたように彼は呟く。 「きみはいいよ、 この仕事には、ぼくの命がかかっているのさ。 あゝ今日も、早く闇を殺しに出かけないと。 闇のなかで人々が窒息死してしまう。 ねぇ。きみは、もう、知っているのかな? ぼくたち人間が夢を見る、本当の理由を、ね」 し、ら、な、い、わ、 その言葉の分だけ、蛍の光りが明滅した。 それを見て、彼はクスっと笑い、こういった。 「きみたち蛍はその羽で月に居候することができた。 ただ、この社会では、たとえ、小さな子どもでも、 夢日記をつける習慣が義務付けられていて、 それにより、人びとの記憶力は上昇したが、 それぞれの心の傷みの部分まで、 いつしか、忘れられないものとなってしまった。 闇は長靴を履いているから、夜の足跡をどこにも残さない。 今でも、人は、それぞれの命の時間のおしまいに、 長靴で口を塞がれたまま、永遠の眠りのなかへ、 ポチャンと葬られてゆく」 その後、しばらく蛍と目を合わせた後、 彼は優しく囁いた。 「きみがいるから、ぼくは安心して眠りに落ちることができる。 きみがいるから、きみが抱きしめてくれるから。 いつも、いつでもね。 だけど、そろそろ、今夜も闇を殺しに出かけなくちゃぁ」 こ、ろ、し、に、ゆ、こ、う、 蛍は光りで答えた。 背中に大きな袋を背負って、左耳のなかへ蛍を誘導させて、 闇を殺す人は夜の街へと出発した。 少し街を歩いてから、ソッと夜空を見上げる。 先日より、僅かに月の解体作業は進んでいるみたい。 痛ましいその姿に、彼は祈りを捧げつつ、 夜空に梯子をかけてから、 ゆっくり、そこを登っていった。 バックホウで抉り取られたままの大地。 痛々しい程、丸見えになってしまった月の骨盤の表面には、 ビッシリ、蛍が群がっていて、今夜も彼らの訪れをジィっと待ってくれていた。 今日も闇を殺すため、彼は蛍の手を借りて、眠りに落ちた人々の、 寂しい心の透き間へと、新たな光りをお届けしながら、 夜の街を歩いてゆくのです。 「サンタクロースは箱なんかにプレゼントを入れちゃって、 まったくもう、勿体ぶって、けしからん」 闇を殺す人は、ぶちっとそう呟きつつ、 それから、細く長い梯子を降りてゆきました。 街が眠りを知らないのではなく、 いつでも、時が眠ることを知らないのです。 「いずれ、この街のすべての鼓動は止まってしまう。 だから、少しでも、ぼくは命の時間を照らしたい。 それこそ、考えるために生まれてきた、 ぼくらの愛の宿命なのです」 それぞれの命は今後、更に輝いてゆくべきなのだ。 彼の仕事はこれからも続いてゆく。 「ピカピカの心臓を大切にね」 蛍は彼の耳のなか、倖せな温もりに包まれて、 それでも、まだ、ウトウトと静かに瞬き続けていました。
下弦物語 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1462.9
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 6
作成日時 2017-12-30
コメント日時 2018-01-02
項目 | 全期間(2024/12/22現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 0 |
前衛性 | 2 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 1 | 0 |
技巧 | 1 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 0 |
総合ポイント | 6 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 2 | 2 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 1 |
総合 | 6 | 6 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
こんにちは。静かな目覚めの後、この文章を書いています。長くなってしまうかも知れませんが、どうしても、お伝えしたいことがあり、このコメント欄を少し、使用します。 ずっと黙り込むこともできましょう。けれども、心のざわめきが聞こえない日など一度もなく、この穢れた人生のなかで僅かに聞こえる、たったひとつの幻の鼓動のような、わたし自身の作品を、今までのわたしの身勝手な言動や、それにより派生された意味の分からぬ偏見で、止めてしまいたくないのです。その理由について、これから、ここに書きます。 以前、この掲示板へと、東川原来夏という名前で詩の投稿をした際、ある方から、わたしの詩ではなく、わたしの人格への個人的な意見のような言葉を、コメント欄で投げかけられたことがあります。聞こえの悪い言葉でも、それなりに根拠がないと言い返す気力もなくなります。だから、放置したのですが、それでも、その後、わたしの未熟な詩を読み解いてくださる方もいて、僅かに心が癒されました。あの時のことは感謝しています。 少し、わたしの生活面での変化について、ここに書いてもいいですか。この掲示板やSNSでお知り合いになれた方もいて、今では、ほとんど彼らとの交流もない訳ですが、それは、向精神薬の断薬に、ようやく成功したためです。東川原いずみ、子猫沢るび、きらるび、他にもたくさんの名前を捨てるために使ってきました。それにしても、あの頃のわたしは、ほとんど気が狂っていましたね。現在、朝の祝福を、確かに感じられるほど、精神が回復しています。エビリファイを飲んでいた頃の記憶は、ほとんど思い出せないのですが、わたしの身勝手な言動で、今まで、たくさんの方を傷つけてしまったような気がします。 わたしの詩にも、これからが存在するのなら、全力で創作の方も取り組んでゆきたいと考えています。わたしの詩は芸術ではない、もしかすると、わたしの詩は初めから、詩の形さえしていないのかもしれない。とても曖昧な言葉です。ただ、書くことで僅かに心は癒やされます。倖せな時間。 最後に。詩で、それぞれの命の鼓動を聞かせてください。言葉だって、生きています。わたしたちがいつまでも、永遠という概念を信じていられるのは、きっと、言葉を扱うためだと思われます。しかし、言葉というものは命に付加した後天的な知恵のひとつである、ともいえます。命を殺して、食べて、今を生きる、自然界の動物たちとは違い、人類の感受性はあまりにも乏しい。だからこそ、できるだけ、言葉は丁寧に扱いたいものですね、人を傷つけすぎないように。そして、生き残るためではなく、これからは、生きるために生きてゆきたいものですね。また、命から語り合いたいものですね。祈りに満ちた愛の言葉で、それぞれの命を心から、抱きしめることができればいいですね。 この掲示板でも、人は今を生きています。それぞれの活動の懸命さが、わたしには眩しく見えます。では、長くなってしまいましたが、ありがとうございます。 東川原未來 追記 いつか、東川原未來と改名します。今後、自分の名前を変えるつもりはありません。あと、子猫沢るびとして、この掲示板へ詩を投稿していた際、そこでも、心ない言葉を投げかけられましたが、その発言をなされた詩人さんとは和解できました。他にも、いろいろな理由があり、この掲示板での活動を、現在、彼女は停止されているようですが、詩人としての彼女の活動の幅を狭める理由は、もう、ないのでは。また、個人的に、ツイッターを再開することは諸事情によりできかねますが、彼女は、まだ、そこにいます。管理人さん、どうか、ご検討をよろしくお願い致します。正直に書きますと、この掲示板に東川原来夏として、詩を発表した時のコメント欄の荒れようの方が、わたしの胸には応えました。作品についてのコメント欄で、あれほどのことを書こうと思えたあの方の動機が、今でもよく分かりません。それぞれ、言葉を慎重に扱いたいものだから、詩を書くのでしょう。そして、その作品を誰かにお伝えしたいものだから、どこかで発表するのでしょう。だから、あの方がわたしの詩について書かれた、あなたの心は爬虫類的で気持ち悪い、などといった発言はナンセンスです。爬虫類にも失礼だと思います。現在、この国では、ある程度、どんな言葉を使われましても、それは個人の自由なのでしょうが、どこでも自由だとは限りません。今まで、わたしも発言では数々の過ちを犯してきました。しかし、その未熟な言動で誰かを傷つけてしまった罪を、これからもずっと背負ってゆくつもりです。 ごめんなさい。投稿した詩のコメント欄を、作品とは別の内容で占領してしまいました。ただ、どうしても、お伝えしたい思いがあったのは事実です。
0訂正 >この掲示板でも、人は今を生きています。それぞれの活動の懸命さが、わたしには眩しく見えます。 正:それぞれの活動の懸命さが、わたしには眩しく映ります。 お風呂に入っている間、ずっと、気になりました。心には視覚がないので、見ることはできませんね、正しく表しますと、眩しく映る、です。今後、自身のコメントへの返信はできるだけ避けたいと思いますが、近頃、臆病になってしまい、どうもいけません。いつになれば、正しく言葉が扱えることでしょう。
0今、とても苦しいです。このサイトには、マナー違反をしたものには厳格な対応がなされるらしいのですが、管理人さま、その方針の平等性をわたしにお教えください。 東川原来夏という筆名を用い、この掲示板へと詩の投稿をした際、渚鳥sさんのコメントで、わたしは明らかに人権を傷つけられました。わたしは生き物が好きなので、あの方が発言なされた、あなたの心は爬虫類的で気持ち悪い、という言葉をある程度、前向きな発言として置き換えることもできます。どの生物にも特性があり、たとえ、小さな虫であれ、今の姿になるまでジッと我慢しながら、それぞれ、歴史を生きてきたはずです。だから、どの生き物だって、立派なのです。 しかし、あの方は、きっと、そういう意味で、あの発言をなされた訳ではない。だって、明らかに、彼女から敵意を感じましたもの。また、その後、発言を改めていたようですが、その言葉にも独特の嫌味を感じました。 あの。管理人さま、少しだけ、わたしのわがまま、聞いてください。今さら、あの方へと厳格な対応をなされることはありません。その必要性は皆無です。ただ、管理人さまの管理体制にも問題があると思うのですね、だって、平等ではないからです。 だから、最後のお願い、聞いてください。このサイトへと投稿した、全てのわたしの存在を抹消してください。お手数ですが、もう、我慢の限界です。ご迷惑をおかけしますが、お願いします。 そのことについて、このコメント欄への返信ではなく、直に、わたしのメールアドレスへとメッセージをお送りしていただけませんか。以後、わたしはインターネットを利用しての詩の活動は控えます。みなさま、今まで、お世話になりました。では、よろしくお願いいたします。 東川原未來
0追記 年末でお忙しいなか、ごめんなさい。いつでも、ご連絡、お待ちしております。
0ー参加者の皆さんへー コメント欄にて東川原未來さんからの問いなどに対して三浦にて連絡を取っております。どうぞ引き続き、作品へのコメントなど書込みください。
0うーーん、作品に対してレスしたい気分です、漠然とした印象ですが、きらるびさんの「無傷神話」何とか見たいな詩を思い出しました。内容は全然違うのですが、自分にとっての読みのとっかかりとして想起しました。あと、文学極道の以前2012年だったか2013年ごろにzeroと言う人の長めの詩にcaseと言う人でしょうか、加瀬と言うのでしょうか、表記はその時によって違うようですが、その人がやった全連引用して各連ごとに解説するみたいな事も事もやって見たくなる詩だと思いました。彼と蛍とのシュールな対話とも見てとれますが、矢張り蛍だけに「闇」と「ひかり」が印象的なタームとして出て来ていて再び読んで見たくなる詩でした。
0東川原未來さんへ 私、嫌な態度でしたか。しかし真剣に読み直した結果、嫌味をこめようなどと思って感想を書いたのではありませんでした。 実はあの当時、詩の中の、『知らずに傷つけ知らずに犯し』の部分を読んだ私の知人が「私は皆さんを傷つけているみたいなんだ」とナーバスになっておりました。 とはいえ私も内輪の事情で貴方にあたるなど、理不尽なことをしたと悔いています。 酷い言葉を使ってしまい、 長い間、苦しませ、申し訳ありませんでした。
0昨日、管理人の三浦さんからご連絡がありましたが、どうも、わたしの意向がお伝えできていないのか、全くの世間話でおしまいになってしまいました。少し、残念なので、三浦さん、電話ではなく、わたし宛にメールをお送りしてください。よろしくお願い致します。 また、わたしはもはや、ネットワークを用いて、誰かと交流を深めるつもりはありません。みなさま、今まで、ありがとうございました。 渚鳥sさんのお言葉ですが、あなたは最後まで、あなた自身の態度を崩しませんね。それが正しい、悪い、ではなく。どうか、今後も、あなたのままで、いてください。 では、誠に勝手ながら、これにて、わたしは詩の活動を去ります。個人的な出版をするつもりは以後、ありませんので、どうか、わたしのことはお忘れください。詩の世界を穢してしまい、今まで、申し訳なく思います。では、さようなら。 東川原 まだ、生きてゆきたい。命の傍には、いつだって時間がいてくれる。わたしは、もう少し、時間と共に歩みたい。時間だけが、生きがいなんです。命があるから、生きてゆける。もう少しだけ、人でありたい。
0東川原未來さん 渚鳥さん 作品へのコメントから外れたレスは止めてください。以降続くようであれば、両人へイエローカード発行します。
0三浦くん 先ほど、あなたへとお送りしたメールと似た内容となるが、 イエローカードでも、なんでも、さっさと出すがいいさ。 それがあなたの真心なのだから。 そして、きみのレスは論点が違う。 渚鳥sさんとわたしを一緒にしてもらっては、困る。 仮にも、わたしだって創作する側なのだ。 いつも考えていたのだが、きみは、僅かに人としての配慮に欠けている部分がある。 レッドカードが出るまで、この話を続けてもいいんだよ。 きみには何も感じないのだから。 わたしも、きみや渚鳥sさんと同じ人間なのだよ。 掲示板の問題点だけ、削除して、 いつまでも、こういった制作側との対立を続けるような運営では、 この場所の未来は見えている。 レッドカードを出すのは、簡単なことなのだろう? いいさ。 あとで、そうなるように、行動するさ。 では。 東川原
1東川原さん 今さっき、メールは返信した。三浦個人として事を収めさせて欲しいと他のサイト運営側へ願い出て両人へ、三浦個人として荒らさぬようお願いした。けれども、このような結果となって残念な気持ちだし、毅然とルールに則って行動出来なかった運営者として失格だとも思う。
0三浦くん 大丈夫だよ、 きみの行動は、勇敢なのだ。 以後、わたしは沈黙する。 今は注意事項に従うしか、方法はないのだろう。 後になって、書き足すような、 そんな注意事項にさ。 ただ、きみの真心は伝わったよ。 ありがとう。 東川原
0最後に。 エイクピアさん、ご感想、どうもありがとうございます。あなたの詩の活動と未来について、ソッとお祈りいたします。
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