受け容れる
闘いつづけることを受け容れる
「わたしたちは
決して闘うために生まれてきたのではないのだ」と
闘いつづけなければならない
ジョン・カサヴェテスのレトロスペクティヴで
久々に『こわれゆく女』を観た
ジーナ・ローランズが演じるメイベルは頭が変な女である
頭が変になって興奮してしまう彼女のことを
夫や子供たちが必死に抱きとめる
分からないが愛する
この映画の中で
彼女の病名は決して明らかにされない
生きることは歳を取ることである
生きるべきか死ぬべきか
極端から極端へと
問いかける
そして答えるその中で
生きることに満足してみて
さて
それからどうしようか
と、砂地を見つめる
ここからまた生きてゆかなければならない
私は若い
ミニシアターを出たあと
私たちは車に乗り込んだ
行きたいところへは
見知らぬ人々と いつも旅をしていた
(そういうものだ)
愛する人々とは
行きたくもないところへ
たどり着いた
ベランダに迷い込んできたようなアゲハチョウに向かって
「おじいさん」だとか
「今日は」
「りっちゃん」
「しゅう」
「またね」
などと呼びかける人々がいる
そんな彼らをキッチンから遠く見守る人々がいる
人は無くならない
無くならないのだ
人は無くならない
無くなることで人は無くならない
人は死ぬのだ
このミンミンゼミのなきごえ
庭で陽を浴びて耀く草と木
久しぶりの幼馴染
山積みになったレシート
すべての輝きが大いに極まるところで
そう、生がふと溢れきってしまう
ここからまた生きてゆかなければならない
しかしまだ生きることを諦めたくはない
あまりにも有名だからと高を括っていた
『捜索者』を観てみると
テキサスの夜がなんだか明るかったので
おもわず笑ってしまった
私はまた生きるのを諦めたくなくなった
受け容れる
闘いつづけることを受け容れる
誰も彼女の病名を決して明かそうとはしない
そこから愛が始まった
愛が始まると、愛についてなんて壊れてしまう
それからその破片を血塗れになりながらも
一つずつ拾い積み重ねてゆく人々がいる
それぞれの形をかたちづくってゆく
いま、なにか大きなものが流れ込んでくる
いつからであろうか
前方に見えてくる
トンネルの長さや大きさが
一目で分かりきってしまうのは
「ほら、あの人たちのもとへ、私たちも」
見通しのきく暗闇とは果たして
分かんないけど愛してる
「またあなたと会いたい」
アゲハチョウだとしても
似ている人に出会うということは
その人そのものよりも
なにか大きなものが
その巡り合いには流れている
似姿を夢見ることだ
夢は見るものだ
こうやって祈りの手の形をして
懐かしさを形づくる
愛し合いながらも
行きたいところへ
たどり着いてしまった人々もいる
(そういうものか)
「あの人たちは遂には車を乗り捨てるのでしょう」
私たちもこのロスト・ハイウェイの先を急ぐ
作品データ
コメント数 : 17
P V 数 : 3015.4
お気に入り数: 1
投票数 : 5
ポイント数 : 0
作成日時 2023-07-24
コメント日時 2023-08-09
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/12/04現在) | 投稿後10日間 |
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技巧 | 0 | 0 |
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閲覧指数:3015.4
2024/12/04 03時08分31秒現在
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文が上手いのはもうわかってた。それを遥かに超えて、この詩からもらった感動を私は忘れない。 この映画もこんど見てみよう ... 素敵なプレゼントをもらった感。 YUMENO
1感動というものを、今となっては素直に知ることができるし、他の人がいま感動していることを、少しずつわかってきた 二十といくつかの年齢になって、感動というものを始めて教えてもらったのだが、それは何年か前に見た『オープニング・ナイト』でした。これもジョン・カサヴェテスです。
1レス、ワクワクしながら読んでます。ありがとうございます! 映画、たくさん見られてるんですね。 私も洋画、邦画を問わず古い映画が好きでたくさん見て来たつもりでしたが、あなたより先に見てない作品を、これで三っつもおしえてもらえた! 本当に嬉しいです! 二十といくつかの年齢とは... 瑞々しいあなたの脳細胞から生まれる作品、今後もすごく楽しみ!!
1そうですね、その三つは有名どころのサブスクなんかにいると思います。 『生きるべきか死ぬべきか』 『ロスト・ハイウェイ』 も 今思えば映画のタイトルですね。もっとも後者の作品の内容とこの詩とは全く関係ありません。無意識でしたw 今後も書くかどうかなのですが、このサイトが変革?終わる?のですかね? それがどうなのか不明なのでなんとも言えません。ほかのsnsなどにも投稿していませんので、ここが潰れたらとりあえずどうしましょうか。分かりませんと言うのが今の答えです。 最も私生活で詩を書くこともほとんどなく、今はもっぱらダンスをしています。今日もワルツやりました。
1こんにちは。 "文学極道とその幽霊達について"さんとともに、応対を続けてくれてありがとうございます。 「お前は、書けるから書いたほうが良いよ」の応援の気持ちは、私も同じです! 書きたい気持ちを大事に、自分に合った場所で書き続けていってもらえたら、私はファンとして嬉しいです。 ダンス!? ワルツとは!! 楽しそう!! いつかMVで見た米津玄師のダンスとあなたが、今重なってますけど。。。! PS 『壊れゆく女』 『オープニング・ナイト』 『捜索者』 『生きるべきか死ぬべきか』 『ロスト・ハイウェイ』 『八月の狂詩曲』 もらった映画のタイトル、大事にします。 YUMENO
1この詩は頭の中で作ったんですよ。いや、スマホに書き起こしもしましたが、もうあらかた頭の中で何度も作ってしまって、最後にこうしてフリック入力しただけなんですよ。 僕は少しずつわかってきたのですが、本当に大切なことは人間はそんなにすぐに忘れられないし、そしてそんなことだけを詩にしてゆきたいと。 多分あなたならこのことをわかっていただけると信じています。これが何も僕の記憶力を誇るものではないことを。 ある日急に悲しくなったんですよね。僕にも名前があると。そんな名前のある僕にとっての大切なことをどこかなおざりにしていたことを。大切なことを大切に書くこと。書くものが書き方を方向づけてしまうような、そんな恐ろしくも美しい大切なものだけを書きたい。そこからようやく文体をどうするかが大事なのですね。それこそ「文体が全て」の意味なのですね。今までユニークなもの、よくわからない書き方のことばかりを気にしていたようです。 今頭の中にはいくつかの詩があります。しかしそれではいけないことは自分も承知しています。やはり文字にして世に問わないと。別にsnsではなくても誰かに問わないと。更にそうでなくても、やはり書き続けないといけない。僕は焦らないでいようと思っていましたが、しかしあなたの言葉でこの態度にどことなく甘えていたことも認めました。 僕も「キッズ・リターン」が好きです。しかしまだその意味がわかりません。好きですがわからないことが世にはまだまだあります。「キッズ・リターン」をしっているおじさんとも会いたいですが、今やはり大切なことは「キッズ・リターン」を知らない若者と「わからないね」なんて言い合うことでしょう。コメントありがとうございました。
1まぁ文体とか大仰なこと言いましたが、内容も文体も、なんだかもういいです。いや、そこからなんです。そこから己を信じて書くんですね。コメントありがとうございました。
1そうですね、あなたの言葉も考えてみることにしてみます。コメントありがとうございます。
0闘いつづけることを受け容れる けっきょく、そういうことなんでしょうね。
0そういえば久しぶりに投稿されてたって思い出して読みました。切り口と音なんでしょうね。いや、書くの上手いですよね。最後まで読ませてしまうってけっこう力いりますよね。それってやっぱ、他人との接点をどうしてるか(持論)ですよね。他人の作品読んでコメント書いてりゃ必ず上手くなんんですよっていう三浦の持論を勘違いしてる人いて、他人の作品へのコメント書きを挫折する人多いんですけど、これって、他人との接点を見直ししたらどうですかっていうことなんですよね。社交辞令という他人との接点を見直す場なんて稀。作者さんは常に他人との接点をシビアに気にしている。特にネットの上でね。 どんなに受賞歴あったり、詩誌から原稿依頼きて、もてはやされていても、書いてるものが面白くなってる人は少ない。いや、逆に裸の王様の作品になっちゃってたりね。 きみは恵まれているように僕は思う。運命(ロストハイウェイ)にね、恵まれている。
4何を言っても野暮になる。カリカリのベーコンとパンケーキ、角を焦がした人参を食べた時に味付けが塩しかなくて、塩にありがとうと言った時の気分に似ている。人はどうして急ぐんだろうかと考えた時に、そうか、急いでから人はその理由を考えるのか、と思った。見切れた写真、はみ出して写らなかった左手の歌だ。拍手。
0筆致が、紙とかに書いたそれで、スマフォで打ち込んだものでない。それでも丁寧に、しかしサラサラと書いたそれで。諦め。引き締まった文章にならず、しかし横へ横へ視点が移るといえば、( )(かっこ)のそれで、スムーズにはいかず、徒労かなぁ、もチラホラ。しかし抜群にかっこいいけれど、かっこいいとかそういうテキストじゃないんだよなぁ。テキストボリュームがありつつ、何度か、うちの愛する人が、後ろの部屋の、ベッドにいて、何か言うもので、二回、中断し、あやして、全部に目を通したけれど。そういうもんなんだろうなぁ。
0>作者さんは常に他人との接点をシビアに気にしている。特にネットの上でね。 そうかもしれません。いや、無意識のうちにもそうなのかも。例えばTwitterとかそもそも苦手なんですよね。特にツイート。あれを考えている最中も投稿した後も恥ずかしくなるんですよ。 決して人間嫌いとかではないのですが、ネットの上にまで人との関係をたくさんは持ち込みたくはないですね。あと恥ずかしさ。もしかしたらそのために、相手に申し訳ないことをしている時があるかもしれませんが……。 付かず離れずが大事ですね。特に付かず(の部分)。相手から引き離されるときにこそ、その相手に魅力を感じることもあります。男も女も。
1そうだと思いました。
0人は急いでから理由を考えるらしい。 けれども私は案外物事の先を見通して、何をするにつけても理由や言い訳を考えてみたくなります。案外、石橋を叩く方です。
0なんだか難しいコメントですね。ありがとうございます。
1最後の行のロストハイウェイが印象的ですね。 「またあなたと会いたい」 アゲハチョウだとしても 似ている人に出会うということは その人そのものよりも なにか大きなものが その巡り合いには流れている この6行が印象的です。ああ、揚羽蝶か。巡り合い。なにか大きなものが示唆的です。
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