人は「大丈夫」という言葉に弱いらしい。仏教の世界から仕入れたこの言葉には、元々優れた丈夫さ、決して壊れない様子や健康さという意味を抱えている。
現世は無情だ。
故に努力や夢、諦めない気持ちなど、甘美な言葉で紡がれ記述された世界は、ため息が出るほど美しい。
私が今見上げる暗晦は、遍く地上に影を落としながら空高く舞っている。
一寸先は闇、禍福は糾える縄の如し。
世の理を映した一葉の葉書は、時に敬虔の念を抱かれ、またある時は屑籠の中へ放り捨てられる。
ため息出るほど美しい世界は、そんな葉書の堆積物が擦れ、捻れ、割れ、欠けただけのものなのかもしれない。
そこに人は価値を設け、また新しい文字で記述を始める。
そして再び作られた地表の上、踊らされたマリオネットは何を思うのだろうか。
「それ」が何を思おうが、きっとそこに希望があると信じている。
現世は無情だ、世界は無情だ。
今の一瞬、私が瞬きをする間に成したこと。
その微小変化の積分に、朧でも露でも表現のできない儚さを加えた、そこに人は存在する。
彼を如何様に刻もうか。
そう、彼だけが現世の無情、我らの不安や孤独を記述してくれる。
もう大丈夫、怖くない。
作品データ
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作成日時 2023-05-17
コメント日時 2023-05-17
#現代詩
#縦書き
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2024/11/21 22時06分38秒現在
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こんにちは。 多くの人が大丈夫という言葉を求めているのは、それだけ不安感が蔓延しているのかもしれません。まさに一寸先は闇、暗晦が遍く地上に影を落としているということなのでしょう。 そんな影のもと、数多の言葉が溢れる中でも、そこから新たな価値を見いだす希望を信じている、というところに何か救いがあるように感じます。 ところでこれは個人的な感想なのですが、所々に「無情」という言葉が使われていますが、全体の流れから見れば「無情」よりも「無常」のほうがしっくりくるような気がします。 特に、「現世は無情だ、世界は無情だ。」のすぐ後の部分は、非常に精緻な表現をされているので、「無常」のほうが合うと思います。
1ご指摘ありがとうございます。 「世界の無情さ」を軸に書こうと思ったのですが、前作と同じく「無常観」に近づいてしまいましたね。 批判的な作品を作ってみたいのですが、存外難しいものです。 どちらの意味で取っても楽しめる作品になったかなと私は思います。
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