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二つの視点:櫻と桜
細密画捨てゐし河に泡たつうちなぶられし裸婦像魚眼 都市建築庇を支ふほほづゑのなにおもふともなき夕血に滾り 双眼鏡うちならべて没入の飛行機を追はむ零戦のエンジンへ蝉の声 悩み無かれ 花瓶ばかりつづく展覧会に庖丁のごとぬめる一幅 あざとくもあどけなき花散らしぬる檸檬の木には檸檬の花を 屈辱にひたひを擦り減らすものへ手本の如き枝振りの梅 梅なだれ桜なだるる河津へと差し掛かるロッキードF-35 軍人差迫れる不安へと喚きつつ死に従ひ粛々と歩みをり 突き進む平和の為の平定へ欠茶碗ころがれる橘 われならば火を放つ沈みゆく舟に空気垂れこめゐし晴天に 銃声の篭るまひるま鷹を撃ち少年粛々として帰る 謂れ問ふ染井吉野に繁殖の重みこそ在れ 産めずして殖ゆ 国家最高機関至上命令 に日の丸掲げゐるひとの影灼け付きぬ階段の前 結ばれて絆まづ破る為に在り住宅街低く掠めるCorvus brachyrhynchos, 亡命の後を明るみぬかるみへ泛ぶ祖国のしるしのがれ纏ろひ この国に産れてそまりゆくダリア景況に雑じりゆき あさやけて 日本人であることの蹉跌にゆきづまりぬ道に簡単に萌す花芽時 今よりは触るる縁もあらざれば吹溜り寄する戸に花鱗 煮え繰り返る血と愛国も吹き入づる此岸桜に埋もれて春 汝国賊也。防衛法に則りて特高に奪はれぬ種籾も 火を偸み櫻を偸む 丘のもとに裁かるる爲のからださらして 埋立地邁進をせる無限軌道に国花赤茶けてゐて晩春 戦闘機雲間へ鉄の耀きて散らばれる抑止力として名目 後暗きは忘れ底に澱溜て壜の中へと降る桜花かな 国家の同一性担保せる暴力を秩序 言ひ止せる出窓過ぎてサイレン 征き泥む自衛隊退くも択らずは葛藤の末結ぼほる有刺鉄条 戦勝を悦びて見き瞼へと目隠しの布包帯に茜差し 娼婦喀血して夏寒々し療養院にも玉音訴へ 死後硬直に握れる指崩し得ず学徒動員埋めて桜花 ふたたびも音楽繰返し昏く響く軍歌勇壮にして空ろなる * たたかひに傾るる国を睡りをる催眠術師のてのなかに林檎 日本籍剥奪されて誰でもなき亡霊 手詰まりのチェスに差す一手、さへ 敗れ敗れて神軍愛国にわきかへる号外記事の塵吹雪避け 核分裂炉破裂せる水筒に蟠る死の燠抜差しならず熔け落ち 各論に霧掛かるとも常夜燈に散り終へし花の名を覚ゆ 星条と桜に吐気催して逃れ来ぬ青天井に爆撃機のおとずれ 分断の進みぬ国境隣人を愛せるが爲うち交す号砲 韻文に春国粋を謳歌して十二月二十三日には触れず あからひく軍事裁判に疑義なくば検閲の下にひとつの歴史 根幹の風に攫まれ山櫻もちあがるかのやうに散り、原爆
二つの視点:櫻と桜 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 465.8
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 24
作成日時 2023-04-03
コメント日時 2023-04-03
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 2 | 2 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 2 | 2 |
技巧 | 10 | 10 |
音韻 | 2 | 2 |
構成 | 5 | 5 |
総合ポイント | 24 | 24 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 2 | 2 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 2 | 2 |
技巧 | 10 | 10 |
音韻 | 2 | 2 |
構成 | 5 | 5 |
総合 | 24 | 24 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
短歌ですね、あまり定型に拘って居ない、自由律短歌だと思いました。12月23日とか、全般的に国家的なものに対する思い入れの強さを思いました。12月23日と言えば東京裁判の被告の死刑が執行された日ですね。自衛隊など、国賊、国家至上命令、亡命、日本人であることなど。火を偸むなどは、プロメテウスではないですが、神話の世界を想起させ、国家創業を後から振り返っているのではないかと思いました。
0読み解いてくださり、ありがとうございます。 此処迄、対米追従への反感が明らかな論調となってきますと、それを含めまして一つの世論誘導――つまり仮初の独立武装への推進機運醸成へと至る――、 その為の一つの罠なのではないか、とも勘繰っております。ものの見事に。それに乗ってしまいましたかもしれませんが。 何方へ転ぶかは、読者の皆様へ委ねさせていただきたく願います所存でございます。
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