別枠表示
君理論
君は、 君は、どこにいる? 君は、どんな人? 君の、名前は? 君のことをなんにも知らない。それでも君を求めて、僕は時間の流れと一緒に歩んでるよ。おはようも、またあしたも、はじめましても、げんきでねも、どっかに消えちゃった。真っ白で無機質な人生の空間にぽつねんと浮いてひとりぼっち。君もきっとおんなじ。 胸のところに水が溜まって息が苦しいな。心臓の音が骨に染みると、あの日を思い出した。春の日の晩の灯りがよるに心地よい夢を喰わせたんだ。どことなく刺すような感覚の夢だけれど、痛くはなかったよ。 するとしばらくして夏がきて、潮風の味がした。君の汗に似ている。蝉の声はいつのまにか神様がツマミを回して消しちゃった。天の川と流星のいのちも知らないまま、ささやかに永遠を祈った。 いつの間にか秋が来て、コスモスの花畑を丘の上から見下ろすと、君がいる様な気がした。気がしただけだった。僕を嗤わないで。 冬になった。みんな誰かからのキスで一千年の眠りについちゃった。僕と君だけがほんとの音を知ってる。 この静かさを、みんなは知らない。僕らだけの世界になった。君はどこにいるの?一緒にご飯を食べよう。一緒に花を見よう。一緒に話をしよう。僕らの間に秘密はなしさ。 ずーっと生きるんだって。神様が言ってた。僕ら以外は皆いつか動かなくなっちゃうんだって。僕らはゼンマイをぐるぐる巻けば何度でも動けるから、不便だろうね。 ねぇ、どこにいるの?なんだか痛くなってきちゃった、五月蝿くなってきちゃった、嗤い声が頬っぺたを包んできた。 ひとりはいやだなあ。さみしいのはいやだなあ…… 早く見つけるね。君もきっと、そうだと思うから。
君理論 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 920.7
お気に入り数: 1
投票数 : 2
ポイント数 : 32
作成日時 2023-02-20
コメント日時 2023-03-03
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 5 | 5 |
前衛性 | 3 | 3 |
可読性 | 5 | 5 |
エンタメ | 5 | 5 |
技巧 | 5 | 5 |
音韻 | 5 | 5 |
構成 | 4 | 4 |
総合ポイント | 32 | 32 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 5 | 5 |
前衛性 | 3 | 3 |
可読性 | 5 | 5 |
エンタメ | 5 | 5 |
技巧 | 5 | 5 |
音韻 | 5 | 5 |
構成 | 4 | 4 |
総合 | 32 | 32 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
非常に純粋な世界観を刺激されます。まず、音がいい。配置もきれい。二人のことを君と呼ぶ関係だけで出来上がった世界、それは恋人の中の恋人、理想。観念的ではありますがファンタジーと呼び切ってしまえるものでもない。自然が出てきて、特にコスモスの花畑と丘なんていうのはなかなか書けないよなあと思いました。今の時期を考えると、メーテルと哲郎なんかが真っ先に頭に浮かびます。現実の中で理想に祝福されたことがある人が書けるんじゃないかと。あるいは、理想を持ち続け、現実に対峙した人が書けるんじゃないかと。現実と理想の間の往還ですね。芸術家はかくあるべきかなんて思いました。悪意にこだわらない僕の世界が描かれていると思います。ほとんどの漫画や小説で扱われている物語によるような世界です。そのエッセンスというか。
0すごく純粋で、混じり気のない美しい言葉と寂しさがしん、と冷たく貫かれている硬質で美しい詩だと感じます。描かれてるテーマやモチーフ自体には柔らかさがあるのにどこか鉱物のような、もっと言えば宝石のような印象を受けました。
0半年ほどまえから「君」と書いてある詩が苦手で、そこにきて、ストレートに「君理論」ときたので、もしかしたら、突き抜ける何かがあるのかもと期待して読みましたが、やはり苦手でした。
0タイトルと投稿者名がかなりインパクトあって何度か開いて読んでは閉じるを繰り返していたんですが、やっぱ、タイトルとお名前のインパクトと作品自体の度合いが.....すみません、作品のインパクトが薄いという意味です。でもお名前がインパクトあるので次回作も読みます。
1「僕らはゼンマイをぐるぐる巻けば何度でも動けるから、不便だろうね。」 ここから人間に開発された玩具か、AI付属のロボットかと思ったのですが、リアルさが人間以上に感じられるのが、心情の機微ですね。心情の機微にリアルが有ると思いました。
0めちゃくちゃ悔しいので頑張りますね
0ひとりはいやだなあ。さみしいのはいやだなあ…… しょせん、ひとはひとりです。
0