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地面に空いた穴
地面に穴が空いている 穴は大きくも小さくもなく 真っ暗だった 穴は青空が嫌いであった 青空に嫉妬していた いやこの場合嫉妬ではなく 妬み という言葉のほうが適切であろう 嫉妬とは己の持つものが奪われる という危機感を伴うものであり 妬みとは己の持っていないものを 相手が持っているときに 生じる感情だからである 穴は色を持っていなかった 青空の透き通るような 澄みきった青色を 持ち得なかった 穴は夜空が嫌いであった 夜空を妬んでいた 穴は物語を持っていなかった 夜空を彩る月や星が 見上げる人々にもたらす 様々な夢や物語を 持ち得なかった だが穴は己自身を 塞ぐことはできなかった 何を以てしても そのどこまでも暗い深淵を 埋め尽くすことはできなかった だから穴は今でも 地面に空いたままである 昼も夜も空を嫌悪しながら 真っ暗なままであった
地面に空いた穴 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 884.5
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2023-02-18
コメント日時 2023-02-27
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
読ませていただきました。 穴の思いを、見上げるかたちで、表現されてるのが面白かったです。 青空にも夜空にも、昼も夜も、つまり一日中ずっとですね(ふと、曇り空ならどうなのかなとか、穴に陽が射すこともあるのかなとか、勝手に妄想してしまいました)。この穴が妬むことをやめるときは来るのでしょうか。きっとそれは、いじけることじゃなくて、諦めとか、妬むことに飽きたとか、いい意味での諦観になれば良いなと思いました。 あと気づいたのが、穴は塞ぐことができず、真っ暗で苦しんでいる。でももし塞いでしまえたら、それはもう穴じゃなくなる。自分じゃなくなる。それはもっと悲しい結末になってしまうと思い、けっきょく穴は穴のままが1番良いのでは? それをまだ穴は知らないだけだ、と思うと、不思議に明るい詩に思えてきました。 ありがとうございました。
0なるほど! 穴が己自身を埋めてしまったら穴ではなくなる、即ち自分ではなくなる。 今苦しんでいるその苦しみそのものが、自分が自分であることの証しなのですね。 目からウロコです。 貴重なコメントをありがとうございました。
0「嫉妬」と「妬み」の違いの説明に、「なるほど!」と思いました。 「穴」という言葉の意味を色々考えて、存在している物体・物質(こちらの詩だと地面ですね)や行われている事象・構成している要素(例 : 仕事、人員等)に生じた空白部分というイメージを持ちました。 あと、ロックバンド・ゆらゆら帝国の楽曲『空洞です』 https://youtu.be/mKUhq7SYouA を連想しました。 「ぼくの心をあなたは奪い去った 俺は空洞 でかい空洞」 「意味を求めて無意味なものがない それはムード とろけそうな」 こんな歌詞でした。 ゆらゆら帝国は、この楽曲が収録されている同タイトルのアルバムを以て、バンドが「完全に出来上がってしまった」ことを理由に解散したみたいです。 「穴」があるから、その存在が完成するのかもしれないな、と思いました。
0コメントをありがとうございます。 穴という言葉から、空白をイメージされたとのことですが、私がイメージしたのは、光の届かない暗黒、というもので、色でいえば白と黒。真逆ですね。 同じ言葉からでも、イメージするものは人によって様々ということを、改めて知らされた思いがします。 ところで「空洞です」という名のアルバムを以て、バンドが完全に出来上がったというのは、とても面白いエピソードですね。 今後とも宜しくお願い致します。
1穴の自己嫌悪、空との対比、暗さの描き方など、とても面白く感じました。何となく宮沢賢治みたいだなと思いました。内容は全く違いますが、劇作家の別役実が書いた「穴のある街」という短編(『淋しいおさかな』所収)が思い出されました。
0コメントをありがとうございます。 宮沢賢治みたいだと仰っていただき、たいへん嬉しく思います。 今後の詩作の励みになります。 ご紹介された短編は読んだことはありませんが、機会があったら読んでみたいと思います。 今後とも宜しくお願い致します。
1嫉妬とは己の持つものが奪われる という危機感を伴うものであり 妬みとは己の持っていないものを 相手が持っているときに 生じる感情だからである ここ、要らないかもなあと思いました。 読み手を信じるのって難しいですよね。
0コメントをありがとうございます。 どこまで書いて、どこまで削るか、 行間に書かれたものを、 どこまで読みとってもらえるか、 悩ましいところです。 この詩については、 穴が何も持っていないということを 強調するために あえてこの文章を入れました。 ご指摘ありがとうございました。
1語り手の説明口調と言うか なんか気になってしまったな 穴は語り手そのものなのかなぁとか思ったりしたな 苛立ちのようなものを受け取ったけど 苛立ちそのものに嫌な感じはしなかったな虎の咆哮のような感じ 海軍 中佐
0コメントありがとうございます。 今から思えば、説明口調の文は避けた方がよかったかもしれません。 説明のような文が入ると、詩全体のリズム、あるいは雰囲気が崩れてしまいますから。 今後の課題です。 また、この詩から、苛立ちのようなものや、虎の咆哮のような感じを持たれたことは、全く想定しておらず、正直言って意外でした。 受け取りかたは読み手によって様々ということを、改めて知らされました。
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