別枠表示
零下の夜
獣医の手により 外に出始め 後ろ足が外に露わになる 折れ曲がっていた足を伸ばし 難産の終わりが見える 逆子の足を引き 親牛のいきみに合わせ 外界へ その姿を現す 半分気を失っている子牛 親は一切目もくれない 生きるのだ お前は生きるのだ 乾かし拭い 温める 体温37.5度 獣医は帰り 零下の夜 この命はこの手に懸かる 哺乳瓶 初乳を飲まず 小さい口をこじ開け 差し込んだチューブから胃に直接流し込む 藻掻き嫌がり 蹴り上げる 生きろ 生きるのだ お前の様に体を動かす暇もなく 命が 今も進行形で散り続けている いつか死を望まれてしまう 肉牛のお前は それでも今 生きるのだ 保温箱の中で 丸まり眠り付く 二時間後 またチューブで胃に初乳を流し込む 気管に入り窒息してしまう危険を超えて 生きる熱をお前に注ごう やむなく死を望まれ 無念に散っていく子牛たち そんなこの世で お前は生きろ お前は生きるのだ 短く長いその生で 許される限りの良い物を見ろ 朝 体温38.5度の命が眠っている
零下の夜 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 842.3
お気に入り数: 2
投票数 : 1
ポイント数 : 4
作成日時 2022-12-29
コメント日時 2023-01-02
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 4 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 4 | 1 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
ひりひりします。肉食の美味しさと、後ろめたさに、こういう詩は書かれ、読まれるべきだと思いました。ト殺前後の生育や育てている人たちの懸命、噛みしめて食べなければいけないんだな。せめて決して食べ残さない。余さず頂く。ありがとうございます。
0▷親は一切目もくれない にずきんっ!ときました。言語化難しいですが、誰かの「生」のために生まれ、生きそして命おとす現実を日々触れる人の存在も尊いと思いました。
0そう思っていただけるだけでこの作品は書いた甲斐がありました。 ちなみに今月の実体験です。 この子牛の前に体重50キロの子牛が産まれ、持ち上げるのが大変でした。 二頭とも元気に育っています。
1大体の親牛は産んだ子牛をすぐさま懸命に舐め回すのですが、たまに育児放棄する親牛がいます。 この子牛を産んだ親牛がそのパターンでした。 人が近くにいるのならさほど問題はないのですが。 >誰かの「生」のために生まれ、生きそして命おとす現実を日々触れる人の存在も尊いと思いました。 そう言っていただき、感謝です。 日本中の牧場従業員を代表してお礼を言いたいです。
1コメントしてくれてありがたいです!
0牛の出産から、子牛のリアル。現実そのままと詩の両立は難しいと思いました。あるいは詩のリアルが有るに違いないとこの詩を読んで強く思いました。
0印象深いシーンを淡々と追いかけていくだけでも詩になりうるかなと思い、しばしば牛に関する詩はこういう感じになっています。 詩の中のリアルといえば、この作品はそうかもしれません。
0命。
0産まれて死んでは、食卓に並びます。 そして誰かの命になります。
0