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睡眠の技法
ただわたしは歩みたい ただわたしは眠りたい それだけのことも全うできない夜、 星のあいだを明け抜けた車が、 コインパーキングで失踪 そして明滅する靄のなかで、 亜空間へとたどり着く幻想を わたしは確かめていた 多くの死や、 見向きもされない生に縛られ、 なにもかもが耐えられないとき、 金平糖みたいな甘さで、 書物が転がって、 深夜の詩集がわたしを呼びかける わたしがでていこうとした場所から、 2米70糎はなれたところで、 まるできみが話すみたいに 話すんだ でも、わたしは詩集を閉じる もうここまで来て、やめるわけにいかない 戸口を過ぎて裏階段を上ると、 星間連絡船のあとを、 いっぴきの犬が追いかけている ああ、眠れない夜のなかで、 こんなにも寂しい花が咲いていたとは、 気づかないでいたのだ 星の墓碑銘を 検索する一群との、 ささやかな邂逅がいま、 2連めの3行から始まろうとしていることに 結果を表示したモニターから、 わたしの過去に至るまでの導線、 みながひとであったことの痕跡、 たとえようもない悦楽と混沌がつづく生活のなか、 わたしもひとりの沈黙に過ぎなかったという事実とともに きみの寝顔を空想しながら、 この夜という夜を歩くしかないという予感のなかで、 いま、──水を呑む。
睡眠の技法 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 750.4
お気に入り数: 2
投票数 : 2
ポイント数 : 37
作成日時 2022-12-19
コメント日時 2022-12-20
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 12 | 12 |
前衛性 | 4 | 4 |
可読性 | 5 | 5 |
エンタメ | 3 | 3 |
技巧 | 7 | 7 |
音韻 | 3 | 3 |
構成 | 3 | 3 |
総合ポイント | 37 | 37 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 4 | 4 |
前衛性 | 1.3 | 0 |
可読性 | 1.7 | 0 |
エンタメ | 1 | 0 |
技巧 | 2.3 | 3 |
音韻 | 1 | 0 |
構成 | 1 | 0 |
総合 | 12.3 | 8 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
>幻想をわたしは確かめていた 幻想を確かめるという言葉を初めて目にして、幻想を見るのは自由だけど、確かめるというのは、なんか、取り返しがつかないような気がする。 閉じられた詩集を見ているのか、詩集を読んでいるところなのか、詩集の中にいるのかはっきりとわからない空間の中で、詩集が、話者にとって特別なものなんだけど、金平糖という表現が、特別であることをよりリアルにしている気がする。そのくらいの甘さが手離せない感覚がなんとなく私にはある。 詩集を閉じることで、寂しい花に気づいたのかどうかはわからないが、詩集を離れようとしながらも >星の墓碑銘を >検索する一群との、 >ささやかな邂逅がいま、 >2連めの3行から始まろうとしていることに というところに、何となくネット詩を思い浮かべてしまう 導線という言葉から、これまで話者は自分で歩いたのではなく、敷かれたレールのようなものを転がってきたのに対し、痕跡という言葉から他のひとは、じぶんで歩いたのだという、話者の劣等感のようなものを感じた 眠れない夜に、歩けない話者が >この夜という夜を歩くしかないという予感のなかで、 ここに何かしらの覚悟を感じ、 >、 >いま、──水を呑む。 ここが、どちらなのかわからない。夜を歩こうとしていることへの緊張からなのか、宇宙(幻想)から地球(現実)に返ってきたということなのか。他の意味なのか。 私事だが、眠りたい、とか、歩きたい、と願うことに疲れて、もう、疲れたことも忘れて、結局投薬で誤魔化していることも忘れていた今、幻想を現実にしようとしていることが急に怖くなってしまった。でも、私も水を呑み、明日を迎えようという勇気をいただきました。 私には現代詩が全くわかりません。作品を書いても現代詩タグをつける勇気もありません。しかし、この作品を読み、自分の奥底と通ずるものを感じたので、思ったことをそのまま書きました。作者様の意図と全く違うかもしれませんがご容赦ください。
1「詩を書く」という態度、行為に対して自己陶酔も嫌悪もへったくれも疾うに過ぎ去り、心臓の鼓動の已まない限りは、息とし記述をし続ける。 然様な領域に既にいらっしゃるのだろうなあ、ともおもうも頻りでありまして。或る意味達観、悟入ですよね、詩への。 何か蒟蒻の様な感想文で申し訳ないのですけれども。つれづれとその様に把握を致しました次第でございます。 やいのやいの喧しい。みずからのエゴの領分がほんに厭になりましたわ。でも死ぬる迄エゴイストなんだろうな、自分は。と。
0この作品の最初の何行かを読んでいるうちに、なぜか小学生の頃を思い出してしまいました。夜って書いてあるんだけど、平成の夏の夜だったらいいな。あ、そうか。睡眠と夜の組み合わせは私に淫夢とニコニコ動画を思い出させ、地元のコインパーキングもそれを手伝って、懐かしくなってしまったのかもしれないです。であれば、全く正しい読み方ではないのですが、私にはとにかくイメージを想起させる作品でした。
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