別枠表示
ラベンダーの薄靄
撃たれた鳥の 墜落はしかし音もなく 血のしずくは雪の面に わたしの目はまだ覚めない 悴む手でも霜は融かせて 指の間から雫は滴り ここは鼻を打つ厚い匂が満ちる森 わたしは霜焼けの指で 無理やり祈りの形をつくる 頭上から呟き声 「これじゃピアノを弾けない。 困ってしまうわ。 困ってしまうわ。」 薄紫のけあらしが立つ この朽ちた橋を川面を包む 欄干にまどろんでいる 赤いマフラーはほつれて 幸福の残り香だった クロロホルムが前髪を濡らし 凍えた口に蒸気が降ってくる 霙はレガート 月夜は青 酸味の強い葡萄は 鈴生り 頬に氷柱 ああそうか この匂は 惑星の静脈血だったのか 「おまえもさびしいのだな。」 もう目は覚めなかった
ラベンダーの薄靄 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 709.0
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 99
作成日時 2022-12-16
コメント日時 2022-12-17
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 25 | 25 |
前衛性 | 10 | 10 |
可読性 | 8 | 8 |
エンタメ | 8 | 8 |
技巧 | 18 | 18 |
音韻 | 12 | 12 |
構成 | 18 | 18 |
総合ポイント | 99 | 99 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 12.5 | 12.5 |
前衛性 | 5 | 5 |
可読性 | 4 | 4 |
エンタメ | 4 | 4 |
技巧 | 9 | 9 |
音韻 | 6 | 6 |
構成 | 9 | 9 |
総合 | 49.5 | 49.5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
昨日、初めて冬の匂いがしました。自分が小学生のときはまだ体育服にブルマーで、冬は自分の太ももの血管の模様をよく眺めていたのを思い出しました。こんなに寒い日も血は凍らずに絶えず体を巡っているのだと。 夏、富良野に行ったとき、初めてラベンダーを見ました。下から咲いてると思えないほど、重力など関係なく真っ直ぐ上に伸びているのが力強く印象的でした。 冬のラベンダー。 自分が冷たいと感じるってことは 対象のものはとける 自分が寒いと思うとき 私の温度はこの空気の 何処かに消えていくのか 何かを暖めているのか その行方を知りたくなりました 冬のラベンダー 残り香 >酸味の強い葡萄は >鈴生り 冬の寂しい感じに この表現が来ても 違和感を感じないのは何故か >ああそうか >この匂は >惑星の静脈血だったのか この詩に血が通ってる感じがするからなのかなと思いました。ラベンダーは夏。でもこの詩のなかでは、ラベンダーは血なのだと感じました。