煙が灰色に立ち込めて、
艶姿を見せたままの、
遊女がソッポを向いたのは、
煙管の旨みのせいじゃない。
あたいの名前は忘れてね。
造花の桜がしなる床で、
つまらぬ饒舌ばかりは、
しばらく喉に引っ込めておいて。
花火が遠く打ち上がる。
睫毛を濡らす涙と、
唇にあてた爪先は、
男には届かぬ、月への望郷。
三線が鳴る今際には、
愛する人がただ一人。
男はいくつも好いたけど、
所詮は下手な恋話で。
愛して欲しいと言う前に、
キスして欲しいと言っとくれ。
伸ばした足が差し招くは、
一夜限りか、永遠なの。
あたいはどっかに行っちまう、
気まぐれな一匹猫で、
水溜りを一跨ぎすりゃ、
異邦の風で泣いてるのさ。
花火の全景がそこに。
見上げた着物の女が、
最後の夜に焼き付けた、
日の出さえ貫く、蓮の花。
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 1079.4
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作成日時 2022-12-10
コメント日時 2022-12-11
#現代詩
#縦書き
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2024/11/21 23時18分43秒現在
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ふーむ 男性の書いた、夢見る女性像って感じがしました。和風で読み物として面白かったです。
0そう、それ!ちょこれーとさん。作り物、造形でいいんですよ、フェルメールの「牛乳を注ぐ女」なんてのも、言ってみれば造形ですから。
0マイクロフォンの性能が高くなったので声を張り上げなくても感情の高まりを表現することが可能になった。クルーナー唱法を思い出しました。息遣いの詩ですね。
0クルーナー唱法。確かにこの作品はぐっと堪えて、強い抑揚を引き出しているのかもしれません。しっかりと静かに囁くように。息遣いの詩。粋なことを仰る。その通りだと思います。
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