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秋の蚊
この夏も虫除けスプレーを余らせてしまい 靴箱の半分以上は 何年分のそれらで埋め尽くされていた そのことをここ数年 深く考えずに過ごしてきたが あまりにも暇だったので やけに気になってしまい 全てのスプレー缶をとり出して 家の玄関で吹き続けていた 「こんにちは」 青年が、犬を散歩させながら 門扉の向こうにいる私に 挨拶してきた 私はスプレーを吹く手を止め ご近所的挨拶を返した 昔、男の子が 散歩させていた子犬の リードを離してしまい 逃がしてしまったことがあった 泣いてる男の子をなだめながら 夕暮れまで一緒に探したが 子犬は見つからなかった (多分あの時の男の子と犬だ) と、その青年と犬を見ただけで すぐに思い出すわけもなく そのときはスプレー缶を 空にすることに集中していた 何となくそんな気がしたのは それから1週間過ぎた頃 近所のスーパーからの帰り その青年と犬を見かけた時だ そうかそうか どっちも大きくなったんだね と1人で呟きながら歩いていると 歩いて汗ばんだくるぶしの辺りが 何となく痒い 両手にエコバッグを持っていたので しばらくは我慢していたけど ついに道路に荷物を置いて ガシガシ掻いた ぷくっと小さく腫れている こんなに寒い日に こんなことってあるだろうか いや、この数年はなかった なぜ全て処分してしまったんだろう せめて1本だけは残すという考えが なぜ浮かばなかったんだろう 私はすっかり忘れていたけど あの男の子は私のことを 覚えてくれていたのかもしれない そう思うと妙に清々しく 蚊に刺された足にも 残り僅かのムヒを塗れば 痒みがすっとおさまった
秋の蚊 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 587.3
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 36
作成日時 2022-10-29
コメント日時 2022-10-31
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 8 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 10 | 0 |
エンタメ | 3 | 0 |
技巧 | 8 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 7 | 0 |
総合ポイント | 36 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 8 | 8 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 10 | 10 |
エンタメ | 3 | 3 |
技巧 | 8 | 8 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 7 | 7 |
総合 | 36 | 36 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
日々の生活の中に感じた気づきが散文的に表現されていて、思考の取り留めのなさがリアリティを演出しています。
0コメントありがとうございます。はい、ここ最近感じたことを、2種類の話に例えて織り混ぜました。てぬぐい様に伝わり嬉しいです。
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