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「しかんぼう・しかんや」
charaが流れていた 気がした、予言者のらくがきが ふるえ、奮え、新宿の朝 早すぎた目覚め、 同時に覚醒しだした空色に 違和感と心地良さ 懐かしさ、親しみ、恐怖 それとも満足?しかんや? 今さらなんでもいいんだ 先週の女が目の前をフラついてる 俺と女を俯瞰して見ると、げっ、 シラフじゃ、どうもならんなあ 歩道橋の斜め下のバッファゾーン 俺は四つん這いになって 最新式を一発尻に、てっ、 ええいちくしょう、いってえな 半笑いのくそがき、 べそかき、電車に揺られ それから昼まで井の頭公園で眠った キチガイはバラバラ殺人を 見事、遂行した彼ら彼女らではない みんな優しすぎるところが裏目にでるから 悪いやつらのせいで、優しすぎるせいで、 なんもかんもおわらせたくなる タクシードライバーが公衆の前で血反吐 おまえにとって、俺にとって、奴は何者か じゃあ俺は?おまえにとって ところでおまえ、 どうして瞳がそんな黄色く混濁してるんだい えらく気色わるいぜ それでいて俺は こんなに落ち着いていられるんだもの おまえか俺か、いや、きっと違うものか おい。なあ、サキ ひどく疲れてしまったよ また俺を占っておくれよ おまえ、また俺に嘘をついたのか なあ、サキ。他の奴のを見たの? 俺も今度から都度払いでやるよ、サキ ふたりの約束、指切りげんまんこ 俺のこと、忘れてしまったかい 元気かい、サキ 俺は病気かい、サキ 俺はおまえと同じ病かい サキ、サキ、サキ、サキ、サキ、サキ あの朝どうして嘘をついた、サキ どうしてこうなった、サキ しなないで、サキ きえないでおくれ、サキ だいすきだ、ずーっと、ずーっと また中央線で眠って、立川で降りた 伊勢丹で四万のマフラーを買って、 やい、首に巻いたら、 そいつは、あっという間に 俺の首を絞めあげて そして俺は、ついに俺は、 夕景の街角に一頭の子鹿を見つけたんだ 「死なせてあげようか」 しかんぼうは俺にそう言うし 言ったそばから目ん玉を濡らして ギター弾きが抱きしめるガキんちょになるし 俺の母親はそいつにいっぱいキスをして ねえ、ホントにいい子だねえ 私の子、私の子、うれしいな、かわいいな 宝物よっ クソみたいな何年が過ぎた 高架下、俺は頭に角を装着した ルーチンにひっついて歩く 「大丈夫だ、なにも恐れるな」 その言葉で正気を取り戻したんだけど、 気がつくとルーチンは消え去り、 俺はしかんぼうを抱きしめていた やあ、またおまえか 俺たちは再会のハギュをした 神様どうかお願いします この憐れな子鹿を、守って頂けませんか どうか、殺さないで、撃たないで ハギュハギュ、ねえね気持ちいいね 俺たち、いつからこうしてた アナーキストのキャンディー屋は 十年前のあの震災から 今も続いてるってのに 俺は冷たい腹の底から 醜いドブネズミを何匹も生み続けるばかり 俺さ、もうここには二度と帰ってこないぜ 力の抜けた女のようにベッドから立ちあがり 俺は冷めきったノブをつかんだ 最後のトビラを開けようとしたのさ ノブをつかんで トビラを奥に押したはずなのに ノブが俺の方、手前に抜けてしまった 信じられないよ ここじゃあ奇跡ばかり起こる、しかんや、 ねえね、聞いてよ、 結局、俺は歯のない狂戦士、 玄関のトビラすら開けられないまま 天高くノブを電球にかざす うすら笑いで見守る嫌な奴らの微妙な声援 おまえら、みんなおかしいよ 負けじとヘラヘラピースで振り返り、 そのまま勢いよくジャプンッ プールの底にゴンッ、ああミスっちゃった笑 パカんと頭が割れて丸ごとぜんぶ出てきた どーしよ、めちゃくちゃいてえ ヤッてるから痛くない んなわけねえだろ、いてえよ あー、空っぽになってしまったかな、 仕方なし、顎をギシらせ、 ワレメをどうにか押さえて 天秤の皿によじ登る 皿の上で空洞に手を突っ込み サーチ、サーチ、サーチ、 してると、 しかんぼうの奴が迎えに来てくれた けど、 もうなにもないの、ごめんね、 よくここが分かったね、 俺に会うために、俺のためだけに、 おまえはすっかり立派になったねえ 俺もね、なんにも知らないフリして 長い間、待ってたの 俺、少しだけ休まなきゃならなくて ここでしばらくじっとしてるから 今夜一晩だけ、そこにいてよ、 おねがい、 Shun Sakuraeda 2022.10.18
「しかんぼう・しかんや」 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1455.8
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2022-10-18
コメント日時 2022-10-29
項目 | 全期間(2024/11/22現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
すごく好きな作品です。たくさん何かコメントしたいけど、考えてるうちに10月が終わってしまうので投票だけさせてください。すぐに言葉になりません。また言語化できるようだったらコメントします。
0瞬瞬さんにしては静かな冒頭からサキと呼びかける辺りで速度が増していく。 暴力と切なさ、寂しさが入り混じった独自の世界を作るのに成功しています。 これはもしかして、凄いのでは。 この返詩でよいのか、即興で川柳を。 抱きしめて 血まみれ苦痛の しかんぼう
0つつみ様 こんばんは。「しかんぼう・しかんや」を 気に入って頂けたようで俺も嬉しいです。 どんなことを想って頂けたのでしょうか。 「鹿ん耶、奇跡なんかひとつも起こらない」
0羽田さん。 川柳ありがとうございます。 歯がね、ボロボロなの。 金色のグリルを入れて とっ捕まえた息の良いルーチンから いい角ぶん取って俺の頭に装着するから、 羽田さんの牛舎で休ませて。 どこでもいいの。 なにも書けないし、書きたくもないし。 ♪ 夜の牛たちのダンスを見たかい
0あれからずっとコメントを考えているのですが、どうも、私の家族が言うには、私が寝言で「子鹿」を連発していることと、この作品がなにか結び付いているのかもしれない、ということ以外どうしても思い付きません。 時々具体的な場所や地名が出てくるのですが、そのタイミングが抜群にいいと思います。 どんどん場面がくるくると変わるのに、そこに違和感を感じないのも不思議です。むしろ心地よい。 しかんぼう・しかんや という言葉を初めて聞きましたが、あまりにも自然に書かれているので、そういえば、聞いたこと、ある。。かも?というようなデジャブな感覚まであります。 今、私の住んでいる町のアートグループが「扉展」という展示を募集していて、この1ヶ月扉のことばかり考えているのですが、 >ノブをつかんで >トビラを奥に押したはずなのに >ノブが俺の方、手前に抜けてしまった >信じられないよ >ここじゃあ奇跡ばかり起こる、しかんや、 >ねえね、聞いてよ、 >結局、俺は歯のない狂戦士、 >玄関のトビラすら開けられないまま >天高くノブを電球にかざす ここのトビラの表現、とてもいいと思いました。私が作る予定の扉は引くタイプですが、わざと外れるノブにするのもアリなのかなと思いました。いや、押すトビラなのにノブが俺の方に抜けるからいいんですよね。 でもなんかいいアイディアが浮かびそうです。 この作品の初めは静かで、だんだんスピード感増して、最後にまた静かに終わる。何回読んでも飽きない作品でした。 色々と私情を挟んでしまいすみません。とてもいい作品でした。ありがとうございました。
0つつみ様 改めて丁寧にコメント頂き恐縮です。 >私が寝言で「子鹿」を連発していることと、この作品がなにか結び付いているのかもしれない、ということ以外どうしても思い付きません。 嬉しいなあ。読んで頂けたんだなあ、と。 俺にも近い体験があるし、 俺の場合は鹿とアナル、つまり鹿を無性に犯したくなる、或いは俺自身が犯される鹿だったんんだけど、 そういう感情が変わったわけではなく、今この瞬間もどこかに取り残されてるんだろうな、と。おまえ居たのか、と、イタい呪い。鍵のかかる部屋ではなく、ぶっ壊れたトビラ。俺のせいじゃない。 こちらこそありがとうございました。
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