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黄色い柱時計
僕が幼い頃、多分物ごごろつくかつかないかくらいだから3歳くらい。 その時に見た夢をいまだに覚えている。 両親はいつも仕事で昼間はお手伝いさんのような女性が家に来てくれていた。 一通り遊び疲れて夕方に眠ってしまった時にその夢を見た。 夢の中で僕は一人で暗い廊下に立っている。見たことがあるような無いような廊下で床は全面クリーム色の毛の短いカーペット幅はそんなに広く無い廊下て壁紙は白。センスの悪く無いどこかの誰かのマンションの玄関付近の廊下だ。 僕はその電気の消えた暗い廊下に一人でポツンと立ち、僕の右側に壁、左側には畳1枚分くらいの窓がある。カーテンは開いていて窓の前には肘掛け椅子が置いてある。 外は冬か秋の急に降り出した雷雨で恐しく冷たい雨が窓ガラスを打ち付けている。 時折付近に稲光が轟き一瞬廊下の奥まで見渡せる。また窓に着いた大きな雨粒は打ちつけられて流れていく影が稲光の一瞬の光で右手の白い壁に黒い影を映し出す。こんな光景が夢の始まりで僕は何をするわけでもなく立ちすくんでいた。その時は特に恐怖も感じなかった。あれだけ暗くて雨と雷が鳴り響いていても平気だった。 ふと気づくと窓の前の肘掛け椅子の隣に黄色い何かその高いものがある遠くからと言うのと雷の閃光でしか判別ができなくて何だろう?と思いゆっくりゆっくり近づいて行くとなんか見覚えのあるような無いような得体に知れない物。姿かたちは当時の僕よりも遥かに高い大きな振り子のある柱時計なんだけど色と言うかその柱時計はマクドナルドのドナルドを連想させるような色形だった。黄色の体に赤い大きな靴と白い手袋、くるくるな赤い髪の毛に真っ白な顔に不気味に笑いかける真っ赤な大きな口。僕は身震いしてその場から動けなくなった。そして気がついたらその柱時計が振り子が提示を知らせる鐘の音を出すと言うのがわかった。でもそれは柱時計の形をした怖いドナルドで流れて来た音楽はとおりゃんせだった。それ以来僕は町の横断歩道に流れるあの曲がトラウマで毎回耳を塞ぎながら走って渡っていた。夢はとおりゃんせの音楽がひとしきり流れて柱時計とドナルドがますます気味が悪くなった時に汗びっしょりで肩で息をしながら目を醒ましていた。遊び疲れて子供部屋のソファーで眠っていた。あと数分で両親が帰ってくると思ったら元気が出て来た。 それから15〜6年後こんな夢は忘れて宅配弁当のバイクで配達するバイトをしていた時期がある。 その日も確か秋か冬の始まりの雨のふる夕方だった。この天気なのに注文は中々入らず1件だけ注文が来たので僕が届ける事になった。 そこは表参道の近くエイベックスのビルの脇の道を入って細い路地をクネクネ入って行った先にある1軒家だった。1階がガレージで階段を昇って玄関に行く。雨と雷はなおも強く激しくなりあたりは暗い中に雷の閃光が光る。お客様が出て来られお弁当の箱の入った袋を渡してふと顔を上げて玄関の奥に視線を移すとカーペットの長い廊下の床、右側が壁、左が窓、雷鳴、雨粒、壁に流れる雨の影。そして肘掛け椅子と黄色い柱時計。 きっとお客様は僕をおかしな奴と思ったのか全て知ってるのかどちらかわからない表情だった。 大きな雷が何かの合図のように閃光を発した後柱時計が鳴った。僕の頭の中ではずっととおりゃんせのメロディが流れていた。ただの夢が10数年振に現実となり僕は何かの扉のようなものを開いたような気がした。 未だに何か分からない。でももうとおりゃんせは怖くはない。
黄色い柱時計 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 655.4
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2022-10-16
コメント日時 2022-10-23
項目 | 全期間(2024/12/04現在) | 投稿後10日間 |
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構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
日常を一変しかねない『闇』ということばから、『愛してる』を歌詞にできる作詞家に似た姿勢の強度(失礼を承知でいわせてもらえば図太さ)を感じました。自分にはまだ照れというか、手段の選びかたに“こうみられたい”的なうわついた気持ちが残っていて、それがただただ情けない。
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