焚き火は燃え盛る
黒いどんぶりに盛られた星粒を
一つ残らず舐め取ろうとする気概をもちながら
天球と張り合っている
なんて大それた目論見
息が詰まるほど素敵な
夜郎自大じゃないか
そういう中に
羽虫が飛び込んでぱちぱちいう
すばらしい合奏だ
羽虫の炎もまた
ほんとうの炎と張り合っているのだ
これは取っ組み合いのけんかをやっている音なのだ
白い煙が昇る─今夜は風もない
つられて火の粉が躍り上がる
反駁のように嫉妬のように
じゃじゃ馬のように猛虎のように
ああ胸がすくような光だ
今ならこの身ひとつで
地球を何周でもできるかもしれない
太陽を見ることができるかもしれない
いつしか汗をかきながら
鳥肌が立っている
口から高笑いがまろび出る
カンボジアの踊り子が
鉦と篳篥が
ジャクソン・ポロックが
敬虔な縄文人が
いつか見ただろう! この焔を
そしておれも彼らを見たのだ
(火は上物のブランデーのように
頭をくらくらさせる
しかし冴えさせるのだ
目が遠くを見ているのは
あまりに分かりすぎるからだ)
おいみんなこの火に飛び込め
なあに恐ろしいことはない
みんな火になるだけだ
おれたちも、あの羽虫どものように
がっぷり四つの大合奏をやるだけなのだから
ラスコーの壁画のような
シェンナ色の合奏を
火炎にくれてやるだけなのだから
作品データ
コメント数 : 2
P V 数 : 937.8
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 4
作成日時 2022-10-14
コメント日時 2022-10-15
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 4 | 4 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 4 | 4 |
閲覧指数:937.8
2024/11/21 20時53分29秒現在
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火、という原始的な存在はその灯す行為に本能にそれこそ火をつける原初の悦び、陶酔がありますね。私もビンテージのオイルライターをコレクションして悦に入っています。教養のある感じと火を扱う原始性が詩らしい気がしました。ただ、もっともっと私も火を引き寄せたい気がします。火を扱って人類は二百万年だそうです。普遍性のある火への思い、私はどう表現できるかな。
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