貴方に参ったと言わせたいが
荒れ地に種も蒔きたい
二重の線で消したいが
全部薬だと知った
名前を与えてしまったら
その瞬間から傷口が広がる
紙の埃を吸い込んで
苦しいから文字は踊る
毛の無い足で痩せこけて
色褪せて灰になるまで
頭蓋骨の中に暮らしていたけど
嫌になって這い出した
パン生地を捏ねる
ベンチタイムを待つ間
一度沈んだ夢が再び浮かび上がる凪の合間に
船長は逃げた
見張りに聞いたら黄金郷は逆だと言う
ヒロインと駆け落ちでもしたのか
書いても書いても満たされないのは
満たされないことを書いているから
そう耳打ちしてくれたのは行間だけで
もっと楽しい話をしてよ
もっともっと話をしてよ
信じられ過ぎて出れなくなった夜のキッチン
神様が迷っている
似合わないエプロンをして
包丁は錆びだらけ
音楽だけは止めないでと
床に散らばった色とりどりのカプセル
それでも色が必要なんだ
綺麗だねと言われたいんだ
きっと誰もがそうなんだ
黙ってシチューを煮込む
言葉はもう狭い封筒に入りたくない
だから夢のある話に乗り込んで
割れた鏡に在りし日が刻まれる
タイムマシーンは重力の浜辺に乗り上げた
また一行目から書き出す
何行書いても、一行目しかなくて
言葉は次々と変わる
なのに私たちは永遠に一行目で
誰かに参ったと言わせたい午前四時三十二分
全自動を買っちゃったから途中で降りられないんだよ
店員の説明をよく聞いてなかった
今言ってもしょうがないって
見たことないトナカイが生まれては死んでいく北の大地で
見ることも見られることもないままに
記録もされず
一度きりの文字となって
一度だけ、自分のためだけに
使われて
私は名前で産み落とされ
そして名前で傷を負った
深夜になると疼きます
痛くて痒くていたたまれないから
リサイクル屋に行きましょう
まだ手動式が残ってる筈
もっと幸せな買い物しましょ?
もっと、もっと
もっと、もっと、もっと
そして荒れ地に種を蒔いて
蒔いて、蒔いて
地球を汚したい
汚したい、汚したい
汚して一行目しかない世界で
今にも窒息しそうな文字の一粒一粒
煎じて口に苦しとは
作品データ
コメント数 : 6
P V 数 : 994.2
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2022-10-01
コメント日時 2022-10-06
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/12/04現在) | 投稿後10日間 |
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技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
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閲覧指数:994.2
2024/12/04 02時29分13秒現在
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妻咲邦香様 何と言っても、詩から若さを感じとりました。若い世代の方なんだなと思いました。詩の流れが良く又ボリュームも申し分無いです。ありがとうございます。
0ありがとうございます。そうなんです、私こう見えても結構若いんですよ。田舎に暮らしてると還暦でも若い!と言われます。そんな私に言わせれば40代なんてまだひよっこです。30代なんて卵です。20代なんて前世ですよ。ティーンエイジャーに至っては石器時代。涙目。。。
0この作品、とても好きです。 レビューを書くのは手ごわいのですが、流れるようなリズムと独特な発想、 そしてユーモアもペーソスも同時に感じられるところが、 この詩をとてもチャーミングにしていると感じました。
0ありがとうございます。チャーミングっていい言葉ですね。手を繋ぎたくなりますね。ペーソスもいい言葉ですね。パンに塗って食べたくなりますね。レビューは私の場合は全然怖がらなくて大丈夫ですよ。躾がちゃんと出来てますから。
1私は名前で産み落とされ そして名前で傷を負った アイデアがいいですね。
0ありがとうございます。そんなの書いたかしら?と思って見てみたらちゃんと書いてましたね。名前はこの世界で最初に抽象化される行為であり、最初に付けられる刻印で、それは最初に付けられる傷でもある、というような意味、だったかな? とにかくそんな感じです。こんなのよく考えたな私。自分で書いときながら。すみません。でもありがとうございます。
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