ふて寝せよ
回転ケージのハムスター
そのシステムは
風にゆれる草葦の
囁きにも及ばない
敗北した知性にしがみつき
枯れた芒を食む
げっ歯類の
われら
日々の時計の光が
パン色から葡萄色にかわるころ
スマホに飽きて
障子紙に恋文を書く
伝書鳩が空に放たれる交差点では
生まれてはじめて自転車を降りて
押しながら歩いた
灰色にぼやけて急ぐ顔たちの眼が
ほんの少し動く
この孤独から逃れるには独りに
ならなければならない
という
逆立方程式を解こうとすれば
ばらばらになった記号が
テレビの向こう側に吸われて死ぬ
という都市伝説を
信じなければならない
この先どうなるかだれにもわからない
でも
なにをしてはいけないかは
わかっている
ただ
だれも、しないことをしないで
病院に
100㍀爆弾が落ちる夢を見ている
柴犬になった行人(こうじん)も
青銅になった樹(たつる)も
バッタになった真司(しんじ)も
テキ屋になった徳仁(なるひと)も
小学生になった文雄(ふみお)も
脳梗塞になった庸(よう)も
同じテーブルについて
雑煮を喰らいながら
病院に
100㍀爆弾が落ちるのを見ている
ふて寝せよ
回転ケージのハムスター
そのシステムは
風にゆれる草葦の
囁きにも及ばない
作品データ
コメント数 : 2
P V 数 : 565.2
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2023-12-02
コメント日時 2023-12-05
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
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閲覧指数:565.2
2024/11/23 19時01分02秒現在
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この孤独から逃れるには独りに ならなければならない 詩人は孤独でなければならないと書いたのはリルケだったろうか。
0鋭い命令形と断定の言葉。ちらほら季節感もあり、冬か。 笹原にかぶった雪を思わせるようにその言葉の筆致はきらきらと光っている。 ふて寝せよ 回転ケージのハムスター と語られるとき、ハムスターは我々か。 私たち、は社会のラットレースに参画しており、日々営んでいるが そこから目を醒ますことはほぼ不可能。だから、目を醒ましたとしてできることは 「ふて寝」しかない。人称がきっと「私たち」なのがポイントなのだろう。 しかしそのシステムは、風にゆれる草葦の囁きにも及ばない、という。 回転ゲージ、そのもの、社会の枠組みの、脆弱性を突いているのだ。 立禅というものがある。立ちながら呼吸を整えるが、そこでパッと、とおくにいる 人間、の名前を挙げてゆくという方法もあるが この作品で、それぞれ名前が挙げられるとき、まるで、天空から中空へ漂う名前が指す魂(たま)を まるで立禅のようにパッと、掴んで書いているような気がする。 禅か、シャーマニズムか。 ここまで書いてくらくらしてしまった。
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