紙が細やかに振動している
撥水性はない
雫が落ちる
水滴は容易に染み込むが
少し弾き出される
風が吹く
枝垂れ柳よりも軽く碧い風
少しの水の重みと粘り気が
紙を飛ばさせない
まだ乾かない
乾けば飛ぶ
宙を舞うが
本音を言えば
空を飛びたい
鳶になりたいわけではない
また声は聞こえてくる
雫は落ち続ける
染み込む
台風が近い
15m/s程度
飛べないが
それでよかった
部分を失うよりずっといい
鷲とて台風には難儀するだろう
また視線を浴びる
雷雨過ぐ
快晴
乾く
概ね皺だらけ
もう飛べるだろう
風は吹かない
黄色の向日葵
桃色の朝顔
光を浴びた緑
蓮の花
吹き返しの風
高く舞う
空には届かない
これで終わっていい
次の雫はもう染み込まない
渇いたまま
本音を言えば
夏鳥になりたかった
燕がいい
軽ろやかな地鳴きを装って
よれた和紙の置き手紙を
そっと机に置く
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作品データ
コメント数 : 8
P V 数 : 1294.3
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2024-03-15
コメント日時 2024-03-17
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/07/06現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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閲覧指数:1294.3
2024/07/06 20時47分25秒現在
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夏の風情があった。紙に感情移入しているのが面白い。
1お読み頂きありがとうございます。嬉しいです。 まだこれから春というところですが、夏が楽しみです。
0よれた和紙の置き手紙 の心象を夏の気象に当てはめ、そのうつろいをとても美しく書かれていますね。素敵です!
1お読み頂きありがとうございます。 気温も高くなってきたのでつい夏を想ってしまいました。 嬉しいコメントをありがとうございます。
1詩の中に、投影されるものが読み手によって違ってくるような、なにか仕掛けでもあるかような、言葉の選び方を感じました。可能性の話をすれば、最後(よれた和紙の置き手紙を そっと机に置く)まで書き切らないという見せ方もありかと思いました。統一感のある文調と、読後の口の中に清涼な鮮やかさが残るさまを感じられて。
1お読み頂きありがとうございます。嬉しいご感想です。 仰る通り、最後まで書ききらないというのも見せ方として考えるべきでした。勉強になります。 「口の中に清涼な鮮やかさが残る」というのは私のイメージを言語化していただいたようなフレーズです。 ありがとうございます。
1夏鳥。夏を象徴するような鳥たちも描かれ、四連など詠めば花鳥風月に、と想いを屏風に巡らせば、この作りはそれほど単純でもないですね。よれた和紙の、置き手紙を、そっと机に置く。紙、そして置き手紙。どうやら背景には身近にひろがる景色よりも内面的な心象風景がイメージに置かれているようです。夏を迎える旅立ちに想いを託すのか、それとも郷愁に奔らせる筆なのか、いずれにしても置かれてある言葉たちはよく練られ、深くて味わいのある作品だと思います。
1お読み頂きありがとうございます。 「詩」と呼ばれるものにおいて、風景と心象描写のバランスが難しいなと感じているので、内面的なイメージも汲みとっていただき嬉しく思います。味わいのある作品と言っていただけて大変嬉しいです。ありがとうございます。
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