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柊月 めぐみ


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柊月 めぐみの記録 ON_B-REVIEW・・・・

「記憶装置」 久しぶりにカメラを持って外に出ました。一瞬ごとに姿を変えていく、あなたの知らない景色の姿をとどめておくために。今この時を焼きつけておこうと思うのです。そしてあなたにおくる写真を撮ろうと思ったのです。 幼い頃から写真を撮るのが好きだったのです。父のフィルムカメラは魔法の小道具のようで、仄暗い画面の少したわんだ陰翳の虜でした。焼きあがるまではわからない表情の意外さや、通り過ぎる景色の一瞬をを切り取ることは、少し前の自分との待ちどおしい対話のようであり、アンティークの万華鏡を覗く懐かしい喜びに似ています。 今はすぐに出来不出来がわかるようになり、その間合いの狭さに生きづらさを感じていたものですが、間違ったと思ったら何度でもやり直せるのもまた、悪くはないのかもしれません。 人が当然にできているように見えることも、同じようにするにはひどく時間のかかる私です。曲がったり、ぼやけたり、これと思うような一枚には、なかなか仕上がらないものですね。ままならないと思うから、気づけばやり直しの連続で続けているのかもしれません。 蔦は冬には赤くなるというのはほんとうでしょうか。真っ赤に染まった蔦が、雪に埋もれた石壁を這う写真を、見たことがあるようにも思うのですが、私の知っている蔦はいつだって、エバーグリーンのままなのです。 銀杏はそのかわり、つい先日まで競うようにして、天を突くように燃えていました。それが今日はがさりとしたプラタナスの上に一斉に降り注いで、造り物の舗道に小さな季節の終わりを描いていたのです。昨日の雨の水たまりに沈んだ、まだ鮮やかな葉は、オフィーリアの亡骸のように美しく、けれども通行人の靴はそんなことには見向きもしないで、路面に張りついた葉を踏みしだいて行きました。かえるにかえれない葉たちは、やがて風に乗って、蝶のように舞い上がるのでしょうか。魂の故郷はどこだろうかと、見送りました。 今、どうしていますか。 1日1日がとても長く、同時にものすごい速さで過ぎ去っていきます。これからの景色を、これからの季節を、眺め、享けとめるのはいつまで続くのでしょう。1人では抱えきれないこのうつろいと感動を、あなたにもいつの日か分かち合いたくて、今日も明日も生きていきます。またいつか会えるその時まで、カメラを片手に。 (「びーれびしろねこ社賞」 応募スレッド)

2021-12-19

「小春日和」 きのうまでの赤と黄が いっせいに飛びたってゆく さよならさよなら さよなら どうして 北から色を失うのでしょう どうして 南は何喰わぬ顔をしているのでしょう どうして 細密画のシルエットが浮かぶ 冬に なったのですね もう 眺めていたかった 響き合う彩り 触れていたかった 燃え立つ熱情 せめて風が 地球をひとめぐりする そのあいだくらい (「びーれびしろねこ社賞」 応募スレッド)

2021-12-17