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駅裏へ
黄色っぽい さびしい並木をくぐると そばにいた一羽の小鳥がおどろいて 飛び去った すると死の瞬間が 私の頭の中に 一つ浮き上がる 日々の事どもは後になり 死の瞬間が一つ 浮き上がるのだ 見えなくなった小鳥 私もまた 群集から逃れ 見えなくなる 駅裏の薬局に あかぎれの薬を買いに行く 私の人生は 人を悲しませてきた 今日一日の生き方もまた 冷たい宵闇が迫っている 一台の自転車が静かに走って 私を追い抜いて行く あの日の事が 私を追い抜いて行く 当て知れず 宵闇の向こうへ あの日私は自転車を置いた 生みの故郷の 駅裏の自転車置き場に 電車に乗って 行くしかなかった 都へ 私を助けてくれるものが 私を殺してくれるものが あるように感じて なんか歩道の赤信号が 青に変わったように感じて 悲しむ人がいるだろうということを 私は考えなかった 私が残していった自転車を 探す人がいようとは思わなかった 妹よ ずっと泣いていたってね 母は私を馬鹿だと言い続けたっけね 父は私の自転車を見つけ 押して帰ったってね 故郷に対して秘密を持つことの辛さ ただ一つの故郷に 故郷に噓をついてはならない 私は本当の事を 打ち明けることができなかった 人を悲しませる たぶんそれぞれの人生 異郷にあって さっきみたいにどこかへ飛び去る小鳥など見ると 何かが死んだような気がする そしてあの時 行方知れずになった私のことを思い出す 人を悲しませる私の人生だ 寒風にまとわれながら 駅裏の薬局に あかぎれの薬を買いに行く 妹よ 母よ 父よ 一台の自転車が今 静かに私を追い抜いて行ったよ
駅裏へ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1575.6
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 7
作成日時 2019-12-16
コメント日時 2019-12-21
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 5 | 5 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 1 |
総合ポイント | 7 | 7 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1.3 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0.3 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0.3 | 0 |
総合 | 1.8 | 1.5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
なるほど。家出をした時は、確かにこんなふうになりますね。 他人の戸籍を買い、別人となって生きているのでしょうから、 故郷で生きていた自分は、死んだものとなる。そのように考 えると、この詩の流れがすべて自然なものとなります。 ちよっと暗い人生ですが、あり得えますね。しかし >自転車が静かに走って 私を追い抜いて行く 自転車に追い抜かれるたびに、故郷を思い出し後悔する。 そしてある日友人と出逢い、家出をした後の事を知る。 >母は私を馬鹿だと言い続けたっけね この--言い続けたっけね--は--言い続けたってね--とするべ きではないでしょうか。そして >駅裏 人生の裏街道を感じさせるこの言葉が、すべてを表現している と思いました。
0st様、お読み下さりありがとうございます。 本作には実体験を書きました。家出の経験があるのは私だけでしょうか。 st様には内容がかなり深刻に伝わったようですが、事実の流れは次のようになっています。 高校生の時家出をした→ 失敗して家に帰った→ 高校を卒業して都会の大学に入るために上京した→ 或る夕方に高校生時代の家出のことを思い出している 失敗したとは言え、家出は家出。あの時私は一度死んだようなものです。自分で作った深い傷です。
0故郷と言うのは絡みつく根のようなものなのかなと連想しました 自分の根っこにあるものは千切れなくて 痛みだけが残っていくのかもしれません
0故郷と言うのは絡みつく根のようなものなのかなと連想しました 自分の根っこにあるものは千切れなくて 痛みだけが残っていくのかもしれません
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