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鋳型
見届けてから死にたいと思っていた 跳ねまわる暴れ馬を 足を踏ん張り どうにか手綱を引き締めて 地上に留めておこうとしたのに 馬は形のないわたしの手首を引きちぎり 手綱を振りほどき胸を突き破り 流星のように赤く尾を引いて 馬は駆け去って行ってしまった 黒く煤けた胸を 縫い閉じようとすれば ほころびた皮が ボロボロとこぼれ落ちる あかぎれに塩をすりこむような この空洞に 融けた鉄でも 鉛でもなんでもよいから 流し込んでみなさい わたしが燃え尽きたあとに 型となって残るものこそ 見えないものを見えるようにするために わたしは何度生まれ直し いななく馬をいくたび 手放さねばならないのだろう そのつど崩れ去る もろすぎる肉体など 切り刻んで捨て去ってしまえ 大きく抉られた胸の空洞から 黒い燃えさしがパラパラと落ちて 文字のように並び始める 読み方は誰も知らない
鋳型 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 876.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-06-02
コメント日時 2017-06-26
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
「見えないものを見えるようにするために」の6連目が特に良い。馬には神聖なイメージを感じるが、詩中の馬はそれと同時に詩中主体に傷を負わせる存在でもある。その正負両方の面がある詩中の馬は運命の形容とも見ることができる。その馬に、運命に、身をなげうっていく詩中主体には鬼気迫る意志が見えた。かつて文学極道が優良作品を造本したようにB-REVIEW選集とか出すときにはこれは載せたいなと思った。この詩はページをスクロールして隠れているところを見えるようにしていくのでなく、ひと目で全体が把握できた方がいい。
0祝儀敷さん、コメント頂いていたのに気づかず、失礼しました。 シルヴィア・プラスの「馬」のイメージに、影響を受けている、かもしれません・・・何篇か、馬の登場する詩を書いています。黙示録の馬のイメージとか、天馬や海馬のイメージ、などなど・・・私にとって馬、とは何か。そのことも含めて、考えていきたいです。
0凄く肉感的な詩だと思いました。 溶鉱炉の様な赤と黒が一節一節から燃え上がっているような。 また、最後の「黒い燃えさしがパラパラと落ちて 文字のように並び始める 読み方は誰も知らない」は、蠢く赤と黒から一転、何処か空虚な静寂と余韻を残していて印象的でした。
0まりも様、御作にコメントさせて頂きます。馬と肉体と猛烈な熱。自分自身よりも激しく勢いのあるもの、情熱というより、情念、情炎、のような。 見えないものを見えるようにするために、身を焦がしながら、残したいものがある。願いや望みよりももっと深く、切実なものを感じました。
0北村灰色さん コメントありがとうございます。身体的な感覚で捉えられるような、五感で感じられるような作品を書きたいと思っています。空虚さ、それはいつも感じていることかもしれません。 夏生さん コメントありがとうございます。~様など、どうぞ使わないでくださいね。馬、のイメージに、昔から惹かれています・・・実際の馬を見たこと、乗ったことは少ないのですが。絵本や物語からの影響かもしれません。
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