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野菜スープ
雨が降っているから ここにいろ、と温かい野菜スープを出されて 何もない郊外・・・・・・、針の雨も降らない。 と考えつつ、さっきまでの憤怒が 冷たい体が、ずずっ。幽体より 人間に帰るころ 少し腰の螺子が痛い、 けれど 目をつむり湯気のなか、 おいしいよ と告げる。 想像したことがあるのか?と親父は言って 妄想ならいつもしている、と応える。 どこにいるんだ?お前は 旅をしている、 紙の上で 動かせない体、唯一眼と耳と指を使って。 無理なんだ、どこにもいけないんだ 針の雨が降っているんだから、 お前の体はいずれ錆びる。 本当に何もできなくなるぞ、 頑張る、 頑張って楽園へいく。 っていうか行ってる。 妄想じゃないか。 匂い。 匂い? 眠りやすくなるんだ。 それだけが救いなんだ。 それで仕事ができる。 感謝している、本当に。 桃の匂い。 東洋か、西洋か知れない、 妄想を定義できるほど、頭良くないから。 本を読んでいるじゃないか。 欲しいものは本当に数行、聖書も食い足りない、 原著で読みたい、でもそんなに頭が良くない。 遺伝じゃない、親父は生活できている、 動くこともままならない僕とは違う、 川があるでしょ、あれを渡って仕事に行ってた あそこでゾーンが切り替わる。 ゾーン? 僕は演技しはじめる。言葉を書く妄想男から 肉体労働者に演技する。仕事に必要な肉体は 仕事で得られる。 それで吸ってるのか? 何を? 煙草だよ! そう。 肉体労働者は煙草を吸う、そんなことなかったけど 実際働いてみたら。 そうだろう。 病人が煙草を吸うな! 後悔している。でも止められない。 もう完全な依存症だし、医者も喫った方がいいって。 嘘つけ。 御免、嘘ついた。医者には相談している。ねぇ、親父。 何だ、 ゾーンからこっちに来ると、家庭の匂いがする。 桃の匂いと遠い、苦しい匂い。幽霊の匂いみたいな。 働いているとき、汗してるとき、それは忘れている。 だから、何も考えず川を渡って帰ってきたとき、 この家が嫌なのか? 深い溜息をついてしまうんだ。 幻聴の方はどうなんだ? ときどき聞こえる。でも肯定的なことを言ってる。 死ねとかそういうことじゃないんだな。 煙草を吸え、って言ってくるよ なんども なんども 煙草を吸えって。 酷い話だ。 親父、俺はさ、ここにいていいのかな 他にいくところがないんだからしょうがないだろう 仕事も順調になってきたんだし。 スパルタ式なんだ。 なんだ、スパルタって。 鍛え抜かれる仕事。一瞬の隙。事故のもとだから。 そうだろうな。 でも叱責されててるの俺だけなんね。 お前が悪いんじゃないのか。 わからない。他のひとも何か言われたりはする、 でもハラスメントじゃないか、って思うときがある。 虐められてるのか? いや、僕の頭が悪いから、仕方ないのかもしれない、 お前は気ぃ使いなところがあるからな。 だから演技している。 ゾーンの向こうで俺、あんま喋らないから。 家でもあんまり喋らないじゃないか。 桃の匂い。 勝ちとれるものがないから、 そんなもののことばかり考えてる。 と、 野菜スープはすっかり冷えてしまった、と 僕は父親の椅子に腰掛け書いていた。 外を眺めればふりそうな空だ。 階層、 を否定した階層に生きて 泳いでいく、 斬り捨てていく、 手を伸ばしていく、 祈りの為に冷水を浴びる 悪寒がする。 すると 親父が肩を叩いて 野菜スープが温まった、 久々話そう、という あー、 俺の引っ越しの話どうなったの? って告げると まだそんな夢みたいなこと言ってるのか、 と笑いながら 困ったような顔をして、 厨の方へ向かっていった
野菜スープ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1008.4
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-06-01
コメント日時 2017-06-19
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
鈴木 海飛さま 素晴らしいですね!幽体離脱しているんですか!驚きです。 自分は眠る前に丹田式腹式呼吸法を実践しています(どーでもええ)。 ちょっとノベルスをかじって、誰だっけ?村上春樹の訳した・・・レイモンド・カーヴァ―か。 レイモンド・カーヴァ―のテイストを実験的にやってみよう、ということで書きました。 まあ、三十で、まだまだヒヨッコですけど、人並仕事はいつも頑張ってやってきたので 少しくらいは仕事ネタやってみてもいいんじゃないかな、とも思いました。 恩恵をおくれよ、ということですね。 今までの人生経験が凝縮すると、妄想めく不思議な人生を送っておりますが 何かと愉しいです。 ありがとうございました。また会う日まで。
0田中恭平さま、御作にコメントさせて頂きます。 幽体離脱、という透明の存在から妄想、ゾーン、とあって。不思議な世界観でありながら、この詩に登場する父親の言葉は現実感があって、やり取りは幻想ではなく 現実のチグハグなもの、相容れないもの、ズレているものがあって。それでも親子の関係が悪いわけではないようで。面白いと思いました。最後は何かさみしい余韻がありました。
0最初の3行に惹かれたのですが、全体に分量が多いような気がします。 「と考えつつ、さっきまでの憤怒が/冷たい体が、ずずっ。幽体より/人間に帰るころ」などの部分を、「さっきまでの憤怒が/冷たい体が/人間に帰るころ」のように、言葉を絞っていきたくなります。好みなのかもしれませんが、今、自分は〇〇をしている、今、〇〇の状態である・・・という部分を、作者の側から積極的に提示されてしまっているので・・・読者の側から想像を働かせて、行間に入っていこう、という意識がそがれてしまうような印象を受けました。 読者の側に、作品がどんどん入って来る、流れ込んで、また流れ出していく、そんな受身の読み方に向いている作品かもしれない、と思います。 父と子の間の、思いやりつつ反発するような微妙な距離感を、もっとくっきり、感じたいと思います。
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