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白い世界
掌から溢れ出る水を ぼくはただ眺めていた 冷えきった指先から裏切られ 形を保てずに崩れてゆく 触覚は煙を捕らえるように消え 尖った神経までもが緩やかに 長い眠りへと誘われる ぼくは思考を停止して 対岸に連なる廃墟をひとつ海へ流した 意識の底へと沈んでゆく 記憶の断片を頼りに壁の外へ踏み出せば 戻らぬように足跡を消そう そうしてあてもなく彷徨い続ける 生き物の死体が鬱積し白くなって 灰のように脆く降り積もる その地が延々と広がって 踏みしめるたびに生を感じる 胸の化石が心拍を繰り返し いつか共鳴することを願って どこまでもゆこう さびれた都市が白く崩れ 廃墟だけが特別な存在として形を保ち 海へ流されるのを待っている ぼくを呼ぶ声は防音壁に吸収され 裂けたコンクリートの隙間から もうそこには誰もいないとわかる きれいに揃えられた靴が役目を果たすように 屋上から吹き抜ける風が白い光をはこぶ 逆らうことのできぬ流れに削られて 巨石はやがて砂になり 白い世界の一部であることを知る ぼくは流れ落ちる砂をただ眺めていた 心が奪われていることを知りながら 消えてゆくのを認めなかった
白い世界 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1470.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2019-01-26
コメント日時 2019-01-29
項目 | 全期間(2024/11/24現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
ポストアポカリプス的な世界観でしょうか、個人的にはとても好みです。安易に二人称を使わず、一人称のみで通したところから、詩中の「ぼく」の孤独さが目立っています。表現や言葉遣いも綺麗です。
0風化して白くくすみ、乾いてホコリの立つ心象風景が続いていますね。 作中のぼくは、なにかしら生命感の失われた者たちへ祈りを与えて回る者なのだというのがわかります。巡礼者という語は違いますが、そのような雰囲気の旅人。 「白い世界」という題名なので、何かを訴える作品と言うよりは物語の詩なのかなと思いました。
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