冬枯れの並木道を裸ん坊の枝枝が指を伸ばす
朝の光が誰のためか未来を歌い
枝枝に金のリボンを結ぶ約束の糸よ
朝の霜をザクザクと踏みしめて暫しの散歩
手編みのセーターを着たダックスフントが得意そうに
飼い主を引っ張ってグイグイゆくのに微笑んだりして
ベルをからりん、と鳴らし喫茶店のドアを開ければ
いつもの窓際の席に座り煙草を同志にする
隣の席に座った細眉に付け睫のばあさんに乞われて
安煙草のゴールデンバットの火をつけてやる
顔を寄せあって火を囲うときの女同士の顔が二本の木立だ
遠く雪山の誰もいない世界で独り新雪をラッセルする美しい男よ
おまえはおまえの美貌に無頓着で
雪山の独りキャンピングで湯気のたつコーヒーをバターナイフでかき混ぜる
我が寵愛の幻のスノードームの玉手箱よ
女は夭逝した詩人を思い出すように
そんな空想をよく喫茶店でした
細く熱く燃える煙草の先端に
思念の張りつめた時を孤独に転がして
女は近くのハム製造工場でラインに立ち働いている
ほんとうは白いネット帽子を被るのが嫌いだ
ラインのスピードは転びそうに速い
ハムの端切れが社販で四割引になるからよく買うのだ
ハムにはカラシ、私には空想を花束に抱いて
そんな風に女はよく呟いた
ラインに立ち働きながら空想するのは
数を数えるように向いている
女は自らを冷えたかまどのように感じるたびに
焦燥や歯ぎしりの代わりに煙草の火をつけた
煙草の熱く燃える先端と契る唇と思考し眼差した瞳の三点を
不可侵の聖三角形と密かに呼んでいた
作品データ
コメント数 : 3
P V 数 : 580.5
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2024-02-11
コメント日時 2024-02-14
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:580.5
2024/11/23 16時56分51秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。
田中恭平さんの作品を読んで無意識にオマージュのように書いてしまったらしいことに今気がつきました。まあ私の煙草への愛を思い出して書いたのですがお気にさわったら申し訳ない。すみません。
0湖湖さん、僕は本当にあなたが詩人として好きです。湖湖さんが、美しい気持ちで人生を生き、 物事に眼差しを投げかけ、詩によってそれを想うたびに、人生という概念が、どんどん美しく なっていくのだと、感じます。エクスペリエンスの積み重なりです。独り立っていますね、湖湖さん。
0過分なお誉めの言葉、照れます。人生を美しいものとして感じられる自分をなるべく保っていたい、そんな理想ですね。もう煙草はやめたのですが、若い頃の自分を思い出して書きました。
0