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若者らの風
「今度、誰遊びに誘う?」 A君が、切り出した。 「誰でもいいけど、強いて言うなら、」 B君、腕を組み、 「空かなぁ」 「空⁉︎」 驚くCちゃん。 「あいつは優しいんだよ。今朝なんかも、雲でケーキなんか作ってくれて。美味くて天に抱きついちゃった。どういたしましての、風も吹いてくれたんだ」 二人は、不満げ。 「あいつ、すぐ夕焼け色に怒るから嫌だ」 「私も。暗い時に、ぽっかりした月で見つめてくるのが怖い」 「なんだよ、駄目かよ」 A君が遮る。 「それよりも、雲で思い出した。クモだ。あいつはどうかな」 「毒グモ?」 B君の少し震える声。 「分からない。あいつの気分次第では、たまに連れてくる時あるけど」 「私、毒大好き!」 はしゃぐCちゃんに、B君は顔をしかめる。 「おいおい、じゃあ、毒空でもいいじゃねえか。雨に打たれた所がジワジワ、腐るところを見て遊べる」 Cちゃんは首を振った。 「生活に、いつの間にか罠が張られて、捕まるスリルを味わいたいの。その時は、世界全体が網目模様に割れる幻覚を頼んだりして、ね」 「ありきたりだ」 B君はため息をついた。 「じゃあ、海はどうかな」 A君が提案する。が、 「いや、あいつは駄目だ‼︎」 強く反対するB。強く、反対する。 「あいつは、Dを殺した! ただの白波だって嘘をついて、深海を打って、それで、依存症になって死んだんだ、Dは!」 Cちゃんがすぐに宥める。 「でも、また海に会えば、潮の流れからDの死体を吐き出すと思う。波打ち際で、また会えばいいじゃない」 「そんなことできるか! ああ! イライラしてきた! 海をぶん殴ってやる!」 A君も怒りを鎮めに入った。 「待て、待て、B。Dはそれこそ、空の家にもいるんじゃないか。空と連絡取って、今度個人的に会って来たらどうだ」 「それも、そうだな……」 ふと、痰が絡んできたので、落ち着いて咳をしたBの口から、何かが飛び出した。それは、一本の永久歯だった。黒い生クリームをしょっている、一本の永久歯だった。意識を失い、Bは倒れた。 「ああ……こいつも大変だな」 「ええ、そうみたい」 A君は、Bの身体を土に踏みにじませた。Cちゃんは、天から垂れてきた毒を絵の具のようにパレットに取って、彼を七色に彩った。 そんな少年の地上絵を、針金の羽根でガタガタ飛んでる、一匹の鳥が嘲笑し去った。
若者らの風 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 465.7
お気に入り数: 1
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2024-01-20
コメント日時 2024-01-20
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
児童劇の会話の様に明快でありながらも、深い隠喩の陥穽が張り巡らされており。 然し乍ら、嘲笑さえも「嘲笑」と明記することに拠って封じてしまう様な、幾重もの認識の上に成立なされた、傑作であると感じ入りました次第でございます。 何処と無く、恐れすらも懐きつつ。 復、誤読ではない事を切に願いつつ。
2コメント、ありがとうございます。 笑いから恐れへの感情の操作はねらっていたため、「嘲笑」の効果について反応を得られ、嬉しく思います。 勿体ないお言葉、ありがとうございます。これからも研鑽していきたいと思います。
1家族的な雰囲気が楽しいです。
1コメント、ありがとうございます。 自分にはない観点でした。 Aが長男、Cが長女、Bが末っ子でしょうか。それともA、Cは父と母……? 読む人によって、イメージが変わってきそうですね。ありがとうございます。
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