鼠捕り掴まへたるは劇場の役者かまたは観客席か
*
Ⅰ,或る辺境の記憶
貧民のマリーの燐寸照らす閨花売りの赤ひ罌粟揺れてゐる
蹴球はさみしきいくさひろびろとコンクリートを跳ね回る少年
不発弾弾けて片足のこども 富める世界の皺寄せの鳥
しづやかに砲弾錆びゆく校庭の地中にて骨蹲りてあらむ、防空壕跡
ガマ幾多傷痍民間人籠りゐて焼かる火炎放射器の脂
自決とは何真先に縊られし嬰児のつむり垂れて眠れり
民族の誇りが爲に埋められしマラリヤの亡骸帰郷せず
美しき航空母艦水葬の火夫閉じこめつつ柩の抒情
日本人銭貨に眩み枯野さへ駐車場へと進みて均し
星の許庇はれ工業地帯無名の労働者数しれず抑圧に晒すを
Ⅱ,寒村点景
呆けつつ神に召されり仰ぐもの従順の仔羊の頭蓋を机上に
荒畠に種蒔くひとへ晩鐘は鳴りせめても黎明に救ひあるならば
馬鈴薯を食む農婦に乏しき卓明り来る日も沈黙に過ぎなむ
陽の蔭にまづしき檸檬畑あり青く実りて空洞の檸檬
干藁車うち捨てられて畝ゆさかしまに一輪の車輪風にまはりて
枯土をほりかへし農夫鍬の切先に掘起こす切株の根
土地痩せて育たずなりぬ燕麦なみよせかへすはいづれのきのふ
黙しつつ家を引き払ひ残れるを旱の畠二十ヘクタール
やがては砲弾埋めて荒地となりぬ戦場はすぐそこまで来てゐる
Ⅲ,絶滅収容所、建国
八月の火傷の痕も癒えやらず花嫁衣裳に隠したる痣
霜月の火事の亡命ストラヴィンスキーへ及べり 嘲弄
バウハウス打ち壊され建築の粋衰亡に労働党歌たからかひびき
絶滅収容所に雲雀飛び来つのどかなる杉並木へと埋む体、体
打ち放しのコンクリートに横たはるアヒルの玩具、こどもの片靴
静謐と光漏れ来む家畜小屋とし到る所に収容所ありき
地下壕へ白燐弾の投げこまれ「鼠が共食ひまたも起きゐる」
報復の敵とし躊躇はず隣人を殺め報復ふたたび
イスラエル建国の檻虜囚とは看守にこそ瞋るものなら
*
劇場の支配人にして興行主遍く戯曲の作者はだれか
作品データ
コメント数 : 2
P V 数 : 583.0
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2023-11-06
コメント日時 2023-11-17
#現代詩
#縦書き
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2024/11/23 18時55分10秒現在
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戯曲として今の世界を想うと、演じるように動かされる私たちは既に人形なのかもしれません。(ピノキオ
1レスポンスを賜り、允に有り難うございます。 そうですね。私も何方かと申しますと、表現に書かされる、シャーマン気質の人間でございますので。 世界潮流に流される、一体の操り人形に過ぎないのかも知れません。 作品自体に付きましては、着地点を稍しくじったかも、と反省を致して居ります。 マジレスです。
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