義父の米寿を祝ふ席は城下町に在る老舗旅館の一室に設けられた。其処は猿回しが名物らしく、玄関脇の庭には然る高名な著述家の句碑さへ在つた。面白いけどちよつぴりかなしいね猿回し。当に宴も酣は、此の席にも猿回しが遣つて来て、怪つ態な装束で滑稽な振舞ひをするものだから皆な手を叩いて悦んだ。
私はと言へば可笑しく感ずる処か寧ろ憤慨、否、激昂してゐた。猿が人に近しいだとか小賢しい理屈等だうでも良かつた。私が思ふに、猿と人とは同じ哺乳類で在る事以外に少しも共通してゐなかつた。とまれ、仮令其れが猫で在つたとして、見世物にして嗤ふ人間の卑しさが、到底ゆるせないのであつた。
私は長座卓を打ち鳴らし、きいいと奇声を発するや、白目やら歯茎やらを剥き出しにして高高と両腕を振り上げた。旅館のロビイには、老舗旅館らしく様様な時代の寫眞が額に収めて掲げられてゐたけれども、昭和初期と書かれたセピア色の絵葉書は其の時の私の奇態を捉へたものに相違ないのであつた。
作品データ
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作成日時 2023-10-11
コメント日時 2023-10-11
#現代詩
#縦書き
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2024/11/24 05時18分28秒現在
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腹が立った時の人間の醜態は猿よりも猿っぽいのか!?
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