私の名前をご存知ですか
「増築太郎」と申します
増築重ねてウン十年
昼でも夜でも増築で
建て増し人生まっしぐら
母は病気を患って
父は(隣町との)戦争で行方不明
幼いがしっかり者の妹と
半人前の弟と
一家四人に雑種犬
養っていかなくてはなりません
泣き言言ってる暇はないのです
毎日の仕事は辛いけど
いつかは私も光を浴びて
駆けて行きます太陽の下
今日も増築、増築だ
要らない階段付けましょう
書斎ももう一ついかがです?
さわやか笑顔をふりまいて
増築太郎は今日もゆく
いつしか人は私のことを
「増築太郎」と呼ぶようになりました
呼ばれる度に私は振り向き
答えてみせるのです
「屋根はいかがですか
台所は足りてますか
増築太郎にお任せください」
お電話一本、メールもOK
すぐにお宅に伺います
安心安全、サービス満点
あなたが幸せになってくれさえすれば
それが私の生き甲斐です
リビングはいかがですか
玄関はいかがですか
たくさんあってもいいじゃない
二階に一つ
離れに二つ
今やトイレも一人に一つ
時代は進んでいるのです
廊下もついでにおまけして
友人知人上司に親戚、ぜひご紹介ください
お友だちの部屋も増やして
お友だちも綺麗にして差し上げましょう
増築太郎は男です
男の中のさらに男
部屋が多いということは
人生もそれだけ素晴らしいということです
さ迷い辿り着けぬも人生ならば
出口がわからないのも人生
増築はあなたの生活を豊かにします
人々の希望を胸に
増築太郎は今日もゆく
似顔絵描いてもらえたら
男前だとわかります
作品データ
コメント数 : 6
P V 数 : 772.7
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2023-10-04
コメント日時 2023-10-09
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/24現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:772.7
2024/11/24 07時13分21秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。
こんにちは。 ユーモラスでありながらアイロニカルでもある詩ですね。 要らないものをどんどん増やしてゆく、現代の社会や経済を風刺しているような印象を受けました。 全体的にとてもテンポがよく、読みやすかったです。最初から最後まで安定してテンポよく書くのはなかなか難しいと思いますので、その点が巧みだなと感じました。 最終連の 「さ迷い辿り着けぬも人生ならば 出口がわからないのも人生」 というところから、人が要らないものまで求めるのは、生きることへの根源的な不安があるからなのかもしれないと、そんなことを考えました。 末尾の 「似顔絵描いてもらえたら 男前だとわかります」 というのが面白いですね。
0調子のよい口上でコミカルに最後まで読ませてくれます。でも、これはホラーです。エルム街の悪夢ばりにポエム街の悪夢。ゼッケンです、妻咲さん、こんにちは。 増築太郎さん、この人、自分のことしか言いません。相手のことはお構いなしです。がん細胞の論理。 >要らない階段付けましょう、 ですもん。自分で言ってます。無目的に増殖する建築-腫瘍化した迷宮の悪夢。「さわやか笑顔」といっしょに悪意をふりまいています。この増築太郎はよくしゃべる癌。腫瘍化した人面瘡という怖い絵ずらのところに >増築はあなたの生活を豊かにします このせりふ。心底冷えます。 >似顔絵描いてもらえたら >男前だとわかります 最後、CTスキャンで男前の腫瘍が映るというね。自分がどこに巣くっているか、探してみろというひそやかな挑発に読めました。 ぼっけえ、きょうてえ。 自分の趣味に引き寄せた感想ですので、迷惑なら迷惑とおっしゃってくださってけっこうですので。
0アイロニカルというのは実は全く考えてませんでした。この詩はですね、実は若い方はご存知ないかもしれないですが山田太郎という歌手の歌う「新聞少年」という昔の昭和初期の頃の流行歌がありまして、それをいじって遊べないかと思ってですね、それにさらに井沢八郎の歌う「ああ上野駅」の要素をミックスさせてみたという、でも確かに言われてみたら皮肉にも受け取れますね。せっかくなのでそういうことにします。はい皮肉です。よく気付きましたね。さすがです。はらたいらさんに全部。
0ゼッケンさんこんにちは。感想楽しませていただきました。 確かにホラーですね。実を言うとこの詩はですね、昔カリフォルニアにウィンチェスターハウスという実在する幽霊屋敷がありましてですね、ウィンチェスター銃のウィンチェスターさんの邸宅だったそうですが、それでその銃で殺された人々の幽霊が夜毎出没するということでその幽霊を閉じ込めさらにその幽霊から逃れるためにひたすら部屋を増築したという逸話が残ってるそうで、その話からヒントを得て書いたものなんです。調べてみたら今もその建物はあるそうで観光名所にもなってるという。えっと、ぼっけえきょうてえですか、私は競艇よりかどちらかと言うと馬の方ですね。
0うーん、面白いですし、今回は少し「掴めた」かなぁと。 じぶんは家は増築できないんですけれど、その書斎に、書いたものをバンバン積んで 昔、妹に「アレを見るとゾッとする」って言われた(笑) その、増築太郎本人は、あまり自宅を増築していないと思うんですね。 それは家族四人、犬となにかつつましい家で暮らしている気がします。 しかし増築太郎の頭といいますか、夢の中では、出口がわからないような 増築建造物があるように思われます。 楽しくて、その安心なのかなぁ、して読める。いいですね。
0掴んじゃ駄目です。こういうのはですね、ちぎって拭いて流さないと。 で、増築太郎は実を言うと現在商標を巡って母親と裁判の真っ最中なんですね。息子の成功を妬んだ母が勝手に名前を商標登録し会員制のサロンを開いてしまったらしいのです。詳しくは知りませんが。彼がこのまま増築太郎と名乗れるのかどうか、それは裁判の行方次第ということだそうです。どうか気にして見ていてくださいね。歌謡メモはこれくらいにして続いては今週のトップ3の発表です。
1