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ゲオルグ・トラークル練習曲『夜』
夜は、木魂のなかで鳴り響く。 傷つきながら、 小梢は 揺れている、昔日に 手折られた 幾多の喉を、道の上に震わせながら。 銀梅花、 湖のひとみのもとへ 落ち、泛び乍ら 錆びた花々を、慄きのなかで 滴らす、血は鮮烈な影を落として。 闇がわだかまり、 足跡を、兵隊の諸々の営みを、 古い木々のただなかに 埋めて、そよぎその枝を撓わせる。 戦場の上に、茱萸の花は熟れ、 且ての幽霊達。 湖を渡ってゆく、 影、また影が滅びの中に浮き上がり 焦燥のなかで、 狂気は静かに乾いた窓を叩く。 やつれはてた、ほのかな暗がりは開かれて――、 吹くだろう、か細い風は――、 亡びた軒戸に 浮上がる 濡れた額を癒すかのように。
ゲオルグ・トラークル練習曲『夜』 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 794.3
お気に入り数: 2
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2023-07-20
コメント日時 2023-07-21
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
第一連は、動きがあって面白かったです。夜が鳴り響くとか、揺れる枝とか。 第二連は、花びらが美しくて、血の影の中の梅の花が鮮烈で強烈な印象を残します。 第三連は闇の中の兵隊の宿営、なんとなく静かで少し大変そうだけど、少ししみじみする情景だと思います。「撓わせる」が「しなわせる」という読みだというのが難しかったです。 第四連はグミの花、戦場と幽霊。 第五連は湖、窓を叩く影。 第六連は幽霊を癒やす風か。 全体的に、夜の闇の中で妖しく開く花々と、人々の滅びの様子、イメージ中心に読むことの多い僕には、とても感覚と感情に訴えてくる詩でした。叙景詩ですね、詩というあり方の文の綴りとしては、オーソドックスですが、気持ちのいいよく練られた文章だと思います。よいイメージを感じさせてもらいました。男らしいというか、人間らしい同情、共感の視線が感じられます。
1こんにちは。 私は不勉強でゲオルグ・トラークルという詩人を知らず、その作品も読んだことがないのですが、少し調べたところ、第一次大戦中に戦場の病院で、言語を絶するほどの苦しい体験をして自殺したそうですね。 それを踏まえるとこの詩は、彼へのオマージュのように思えます。 「夜は、木魂のなかで鳴り響く」 「闇がわだかまり」 「湖のひとみのもとへ」 といった表現や、散りゆく錆びた花々と滴る血との対比、そして 「狂気は静かに乾いた窓を叩く」。 暗く恐ろしげながら、幻想的な美しさを感じさせます。 最終連に「亡びた軒戸」とありますが、これはゲオルグ・トラークルの「滅び」という詩からイメージされたものでしょうか。 暗く重たいですが美しい詩だと思います。 勉強になりました。 ありがとうございました。
1ご講評を賜り、まことに嬉しく存じます。 表題にもございます様に、ドイツ表現主義詩人の大家、ゲオルグ・トラークル史の卓越した文体を、なぞる様にしたためさせていただきました。 何故か、手元に全詩集がございますものですから、捨て擱くには余りに勿体ない、と思い、習作として発表を致しました次第でございます。 訳詩が素晴らしいものですから、屹度私自身の実力を幾段か底上げしてくださったのでございましょう。
1ご講評、考察を賜り、ありがとうございます。 確かに、読み返してみますと句読点が多過ぎますね。 地の文体の癖でもございますので、それみたことか尻尾を出した、と。愉しんでくださりますと幸いでございます。
0ご講評を賜り、心より嬉しく存じます。 多分、ドイツ近代詩に於きましてとても重要な存在位置を、トラークルは担っている様に思われるのですが、本邦では余り読まれてはいないようでございます。 表現主義と申しますなら、美術界では「青い馬」で有名なフランツ・マルク(かの有名な美術集団「ブラウエ・ライター」の名付けの典拠となりました画家でございます)等、錚々たる人物群と関係がございますのですけれども、立体派や構成主義と比較致しますと、稍軽んぜられているような印象をも、懐いております。近代から現代へと至る美術史の潮流に於きましては避けては通れない、主義なのでございますけれども。 稍、話が脱線を致しました。トラークルの詩は。何れもひりつく様な緊張感と、簡潔かつ端正な抒情が同居している処に特徴がある様に思われます。 悉く、素晴らしい詩篇ばかりですので、是非、一度手に取っていただきますと、その世界観に引き込まれる事間違いなし、でございます。 この練習作とは比較とならない完成度でございますので。お読みになられて落胆することは先ずございませんでしょう。強く、おすすめを致します。 以上、ゲオルグ・トラークル及び表現主義への啓蒙文をしたためさせていただきました。
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