JR大阪駅と阪急大阪梅田駅間を結ぶ連絡橋には毎日多くの人が行き交う。幾万の影。幾万の靴。幾万の動き続ける手と足と口!しかし、私はただの一度もぶつかった事がない。するりするりと人々は私を器用に避ける。幾万の人流乱すにはたった一人の私は無力だった。
何本の足趾がその上を通り過ぎたのだろうか。黒い丸。吐き捨てられたガム。誰よりもこの街に詳しいはずだ。私の目はこの黒い丸に吸い込まれるように、落ちていく。落ちていく。その間も人流に支障はない。人々は私を避ける。
ぶつからない。粗末な存在証明。連絡橋から見る車の往来。美しい流れ。川ではなく、組織としての流れ。心臓をなくした血管。脳を知らない循環。巨大な街を動かす人の流れ。吐き捨てられ、踏み固められたガムを、私の靴が踏みつける。私はぶつかることのない流れに身を任せ、粗末な存在証明を捨て去るのだった。
作品データ
コメント数 : 10
P V 数 : 1609.8
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作成日時 2023-07-10
コメント日時 2023-08-06
#現代詩
#縦書き
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2024/11/23 18時35分25秒現在
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黒い丸=誰かが吐き出したものへと、目が吸われ、落ちていく、というイメージがとてもなまなましく、読んでいて気持ちよかったです。 黒い丸は、宇宙におけるブラックホールのイメージにつながっているようですし、それが「幾万の動き続ける手と足と口」のひしめきの隙間にひとつ、あるいはもっと落ちているということ。 存在を訴えること=社会的に立ち止まることになる、という図式とその葛藤が端的に語られているように読めました。 全体に無駄が削ぎ落とされた、誠実な構成だと思いました。 無理に欠点を挙げようとするなら、大勢の他者に、無力な一人の自分が対比される視点がいくぶん硬直的かなと感じます。もっと遠くの視点まで導いてもらえたなら、さらに新鮮な体験になったろうと愚考します。
2こんにちは。 都会の群衆の中の孤独を描いた詩ですね。 吐き捨てられたガムの黒い丸、私も以前はよく見かけました。その黒い丸が誰よりも街に詳しいというのは斬新な視点ですね。その黒い丸に吸い込まれるように落ちてゆく。それは都会に特徴的な他者への無関心の象徴のような気がします。 「心臓をなくした血管。脳を知らない循環。」 この表現は、非常に原始的な動物、あるいは無制限に増殖するガン細胞を連想させます。 統一された意志のない、一見するとまとまっているようで、実はバラバラな世界。そこでの個人の存在証明は、消極的で粗末なものにならざるを得ない、そんなふうに受けとりました。
1ありがとうございます。そうですね、ブラックホールというか宇宙のイメージはしていました。誠実な構成と言って貰えて嬉しいです。
0ありがとうございます。 原始的な動物やがん細胞の連想は私のなかになかったイメージだったのでなるほどなとなりました。 まとまっているようでまとまっていない感覚が都会にはあると思っています。
0ありがとうございます。そうですね、もう少し深いところにいけた詩だったかもしれません。
0すみません、昔はあの橋、無かったんでしたっけ。すこし前に友人と話してて、この橋昔はなかったよねって話をよくしたねと言われ、そうだったかな、この橋は生まれてからずっとあったような気がするって、私は思ったんですよねえ。そっからはもう遠い過去におもいをはせるひびですよ。
1ありがとうございます。尾崎豊あまり知らないのでディグって見ようと思います。
0ありがとうございます。いつからあったんですかね。いつの間にかずっと前からあった顔してそこにいましたね。
0うん。入間しゅかさんは羽ばたいているでしょう。そのまま飛行して下さい、燃料が切れたら供給します──偉そうだけれども、そんな言葉を投げかけたくなってしまいました。 その、僕が好きな、しゅかさんの冒頭、脳内活性フレーズは、この作品にはないけれども、しゅかさんの声色みたいなものが、語りに乗ってます。入間しゅかさんの声色は聞いたことがないのだけれど、海風を孕んだような、ちょっと塩辛い声なのではないだろうかと、勝手妄想します。いけませんね、妄想は。
1ありがとうございます。声色まで想像してくださってちょっと照れくさいですが、嬉しいです。 そのまま飛行していきます!
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