ふざけあう雨が降っていた
音を持たない
けたたましさの
なかで
肌を覆う
真っ白い肌着が濡れている
赤が透けて見える身体の薄さを自ら抱いて
微熱がひいていく
私は
すー
と座っていた
ほっそりとしたいくつもの道が交差する公園は
たたずむ山と楽器の名を持っていた
訪ねるたくさんの足音に彩られ
はずむ雨に名はまだなかった
雨合羽を着てじゃれつく幼子達が
くるくると周り合っていた
周遊路にたたずむ透けた胸元から
小指一つだけ先に
濡れない
ほんの小さな丸いすきまが灯っていた
雨の降る中にそっと空いたすきまが
ひそやかにうつろう
移動線が上へ上へと伸びていく
山頂の雲の降らせる
雨はふざけあっていた
ぬるくじゃれつき髪に浸透し
肌を縁取り
いくつもの足音を採取し
受け入れ
地表に垂れていく
それでも水滴はきちんと澄んでいる
地表の手触りに
ほんの少しの嘘を携えて
耳を傾けた
水の声はしなやかな周回遅れだった
胸元に灯る空間は
満たされ得る
私の外にある中心だった
立ち上がり
自転する幼子と同じ息遣いで
自転してみた
ふざけあう雨が降っていた
追想すべき意味を持たない
それはけたたましさの
ただなかで
肌を覆う
すきまが水を含んでいる
浸透していく身体の重さを預けて
微熱が全身を包んでいく
私は
すー
と
傍らに
作品データ
コメント数 : 14
P V 数 : 2798.3
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 6
作成日時 2021-08-26
コメント日時 2021-09-17
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 2 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 0 |
音韻 | 1 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 6 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.5 | 0.5 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0.5 | 0.5 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 3 | 3 |
閲覧指数:2798.3
2024/11/23 19時06分02秒現在
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ふざけあう雨。人を濡らす雨。弾む雨の無名性。移動線とは天気図の中の名称の一つだろうか。山頂の雲の降らせる雨。髪に浸透する。足跡の原因ともなる雨。「私」が雨の友とも取れ、体のラインが雨と共にはっきりしてくると、あらゆる予報が狂って詩が生まれるのかもしれません。
0情景が浮かびました。
0天気予報。想定にない読み方でした。 そして無名性。想定した読み方でした。 詩の生まれる刹那を描いている。 そう受け取られることがたまにあります。 であるとしたら詩の生まれたその次の瞬間にはなにがあるのでしょうか? 書き続ければ見えるのかもしれません。
0読後感が良いですね。「すー」という、澄みわたった気分になりました。 微熱と「すー」の、感覚の対比が好きです。 >すきま きっとそんな単純な主張ではないと思うんですけど、作者はここが伝えたいように思いました。この言葉が、強く胸に残るから。
0ありがとうございます。 > すー と > すきま そこは少し拘った部分です。 つながれて嬉しいです。 主張はどうでしょう…… いつも私の主張はとても単純な気がします。
0確かに言われていみるとこの作品は徹頭徹尾描写で進行していますね。 意識しておらず、むしろ最も自然に書ける方法で書こうというコンセプトで書いたものであったのでそのご意見に驚きました。 >> やわらかいタッチと、読み手の側に立った視点での話の勧め具合。そして、核心を外すことの巧さという点で、以前よりもより自然な技術を感じてしまいます。 こちらのご指摘はもう見透かされているなぁという印象です。 特に読み手の視線の誘導をかなり意識しているのでそれが少しでも達成していれば嬉しいです。 そして核心の外し方に関してお褒めいただきありがとうございます。 また、やはりどこまで外すべきか悩みは尽きません。 そのままズバリ書いているような作品も嫌いではないし、読む分には分かりやすくて好きなんですよね。 少しハッとさせるような直接的な表現も入れるべきかなぁ、やはり外す方がいいかなぁと悩んでいます。 塩梅が難しいですよね。 いつもコメントありがとうございます。 自作をしっかり考えるきっかけになっていて嬉しいです。
0「ほんの少しの嘘を携えて」という一言に惹かれました。
0その文言の含まれている連がこの詩のクライマックスであればいいなと思っています とても嬉しいです
0ありがとうございます。今を大切にしながら、心に響くような作品づくりを行いたいと思っています。これからもよろしくお願いいたします。
0色々な雨の中での人々や語り手の描写がくるくると表情を変えながらリズム良く進んでいきますね。 周遊路にたたずむ透けた胸元から 小指一つだけ先に 濡れない ほんの小さな丸いすきまが灯っていた という部分、雨が空から全体に降っている中で、濡れない小さな丸いすきま、そこに語り手はホッとした何かを感じたのかなと思いました。 雨降りが多いですが、憂鬱かもしれない雨降りの中にも色々な人間模様が垣間見られてきょう作品でした。
0すみません。 コメントした最後の行、変換間違えました。 興味深い作品でした。 です。 よろしくお願い致します。
0雨の表情が豊かで、とても心地よいです。そして少し色っぽさを感じられるのもGOODです。素敵な作品、ありがとうございます。
0ありがとうございます。 ただ、その辺も自分では葛藤もあるんですよね。 ちょっとエロく、美しい描写でそれっぽくまとめる、ってのはいくらでもできて過去作をご覧いただければわかるのですがもう予定調和化しているんです。 でもまぁ一皮むける期待を胸にこれからも書いていきますので気が向いたらよろしくおねがいします。
0いつもありがとうございます。 登場人物を少し増やそうと努力してみました。 人間模様が見えるのであれば少しは成功でしょうか。
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