ここに墓をたてよう
今までの時間のために
すべての痛みと悲しみのために
今は穏やかな仮面を被って
おとなの顔をしてみせている
ものがたりの一場面のために
ここに墓をたてよう
あきらめ顔でこれからを
生きていくかもしれない
あたしのために
すきなひとと手をつなぐ事も
優しいシフォンのスカートも
薔薇色の口紅もつけることは
賞味期限が切れた
あたしのために
ここに墓をたてよう
抗っても「ひとり」になる
これからの思い出のために
ふたりソファに座ったなんでもなく
笑った朝も
どことは言えずに背中を
引き止めた真夜中も
ちいさく上下する肩を見つめた息を詰めて
立ち尽くした朝方も
緑のソーダ水を飲んで
互いに舌をだしている夏の写真も
ぜんぶが思い出の彼方へいくために
そしてあたしは墓守をしよう
花を飾ろう
あのひとが大好きな桔梗の紫で
埋めつくそう
ここに墓をたてよう
いつかそこへゆくあたしのの名を刻み
成層圏を超えひろい宇宙に溶けて
やっとなまえがなくなるあたしのために
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 1479.2
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 17
作成日時 2021-01-26
コメント日時 2021-01-30
#現代詩
#ビーレビ杯不参加
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 6 | 6 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 6 | 6 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 5 | 5 |
総合ポイント | 17 | 17 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 3 | 3 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 3 | 3 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 2.5 | 2.5 |
総合 | 8.5 | 8.5 |
閲覧指数:1479.2
2024/11/23 18時45分47秒現在
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「いつかそこへゆくあたしのの名を刻み」このうち、の、がダブってますね。私もよくやります。 私はこういう詩が好きです。 必ず老いていくこと。女性は、おそらくは男性よりもファッション、その他の選択肢がどんどん少なくなっていくこと。深く読むとジェンダー論にも通じていく気がする。 でも、完全なる諦めはないんですよね、ふてくされて腐っているという感じがなくて。 簡潔な文体からどこか明るさというか、芯の強さみたいなものを感じます。 生きながら自分やその他の思い出に花を供えるという行為が、決して生きてきた思い出を否定していないということ。 「ここに墓をたてよう」の「ここ」はどこなんだろう。作者の心の中にあるのかな。そこには美しい花が添えられている。 宇宙に溶けて個ではなくなるということが、決して恐怖だけではなく、孤独からの解放のようにも感じる。以前、何か、たしか少女漫画家のジェンダー論で読んだのですが、男性はある程度の社会的地位などを確保すれば、男性の仲間の群れの中に入ることができる。でも、女性は子育てしていようと、働いていようと、男性に媚びようと、フェミニストになろうと、「女性の仲間の群れ」というものがなく、それぞれがひとりぼっちの存在なのだと。 女であることはとてつもなく孤独で、死んでやっと個を捨て何かに混ざることができるのかもしれない。そのような途轍もない孤独に耐えうる性(生)を与えられるからこそ、どこかしなやかでしたたかなのかもしれない。 いろんなことにとりとめなく思いを馳せることのできる良い詩でした。ありがとうございます。
1修子さんコメントありがとうございます。 ここ、とは、どこにあるのか自分でも分からないのです(笑) 生きる道すがらいろんなところにきっとあるのでしょう。 素敵なコメント本当にありがとうございました。
0墓をたてようのタイトルの時点で悲しい詩の予感がしたのですが大きくはずれました ここに墓をたてるまでの登場人物の歴史が綴られて読みやすかったです
1福まるさんコメントありがとうございました。 歴史が綴られていて読みやすかったと言われて嬉しかったです。
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