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フィラデルフィアの夜に XX
フィラデルフィアの夜に、針金が広がります。 地面を這い、壁を登り、針金が方々に広がっていく。 細い針金が、伸びていく、広がっていく。 人の足元に、道路の隅に、建物の端に、地下道を、茂みの中を。 そして降りしきる雪の上、真っ暗闇の中、音も立てずに。 聞こえてくるのは、声。 雑踏に、騒音に打ち消される声。 雪の中に飲み込まれていく、声。 誰が聞くこともない、その声は、歌でした。 針金が伸びていく。 細い針金が、気づかれることなく、伸びていく。 絡みつき、引き寄せ、また伸びていく。 何かを探すかのように。のたうち回る。 もう誰にも知られることのない地下室、その前で。 声が聞こえます。 歌が聞こえてきます。 もし誰かが、本当に耳を澄ませば聞こえる歌が。 その地下室から。 針金は意思を持つかのように、探し、見つけては、地下室へ持ってきます。 光を。 それは捨てられた鏡や、金属。 暗い世界に光を与える、輝く物。 少しづつ少しづつ、光を、輝きを地下室に。 今はまだ暗いけど。 日が差してくる。 光が、地に満ちる。地下室には当たってこなかった光が。 でも今は。 狭い地下室を満たす。 「つみとが けされし わがみは いずくに ありても みくにの ここちす」 光と輝きに満ち満ちた樹が、地下室に立っていました。 針金が集め、様々なものを縛り上げ作り出した、最上の祈りが。 歌を呟く老人の目の前に。ありました。 目の見えない老人は、それに気づいているのかいないのか、歌を歌い続けます。
フィラデルフィアの夜に XX ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1437.4
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 7
作成日時 2020-12-17
コメント日時 2020-12-21
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 2 | 2 |
総合ポイント | 7 | 7 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0.5 | 0.5 |
構成 | 1 | 1 |
総合 | 3.5 | 3.5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
あ、フィラデルフィアだ!と思って読んでいました。 やはり金属でも時間でも、とても有機的に感じるのです。 有機的というのは、まるで生き物のように、作品世界が動いている感じです。 針金が、生き物のように動いていると感じるのは不思議な感覚ですが、 この作品では、声や、いえ声が それでも、作品世界が自立的に動いているように感じるところが個人的には好きです。
1気が付いたら20作品も投稿しているこのシリーズ。 楽しみにしてくれている方がいるのがありがたいです。 説明なく針金が有機的に動くこのシリーズの特徴ではありますが、作品世界も独自に動いているのも確かです。 また書き続けていきますね。
1火の鳥は一通り読んでいますが、三つ目が通るはほとんど読んでいないので何ともいえないのですが。 三つ目が通るの超常的な光景と火の鳥のようなある種の賛歌は、この中にもありますね。 鍵カッコの中のセリフは讃美歌だったりするので、宗教画の印象を与えたかもしれません。 祈りという点でもそうなるかも。
0「光」や「針金」の、光沢感のある表現が、宮沢賢治の詩のようで凄いです。でも「歌」はまた違う趣がある言葉だし、「フィラデルフィア」のモダンさが、良いスパイスになっていると思いました。
0宮沢賢治を意識したつもりはありませんでしたが、ちょっと似たかもしれませんね。 元ネタはフィラデルフィア・ワイヤーマンと仮に言われている人物の作品なので、モダンさを狙ってはいないのですが、結果的に効果を生んでいるかもしれないです。
0言い忘れてました。 >「つみとが けされし わがみは いずくに ありても みくにの ここちす」 この箇所は 「みくにのここちす」 聖歌 467番 の一節です。
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