彼岸花が咲く頃、ひとつ語りたいことがある。
この俺がどれほどの人でなしであったのか、それを人様に語って聞かせるには時間が必要だ。まるでバーのマスターが客の愚痴を全肯定するように、その人には黙って聞いてもらわないとならないかもしれない。
故に一言で片付けるとするならば、(あの頃の俺の心を無視せざるを得ないのだが、)自分勝手だったんだ。
俺の数々の言葉に傷つけられた人は多い。俺の言葉は毒ガスのようにジワジワと、刃のようにグサリと、人々の心を痛めた。
しかし俺は、言葉が諸刃の剣だとは知らなかった。知らず知らずに人を傷つけ、知らず知らずに己を傷つけ続けた果て。真夜中に握りしめた包丁をボンヤリ見つめる俺がいた。
今、俺はただ悔やむのだ。
人々に向け続けたあの刃を。
彼岸花が咲く今、俺は覚悟している。
優しくなるんだと。
優しくなることに覚悟が必要なほど、俺は人でなしであった。
涙が出そうなほど、人の「愛」を知る。
涙が出そうなほど、人の「絆」を知る。
そして、お前は赦してくれた。
人になろうとする今の俺を認め、俺を赦してくれた。
嗚呼、彼岸花が咲いている。
人になろうとする俺は今、何を言えばよいのだろう。
選んだ末の言葉はあまりに当たり前な、しかし今の俺には美しすぎる言葉だった。
ありがとう
作品データ
コメント数 : 1
P V 数 : 989.9
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 1
作成日時 2020-09-15
コメント日時 2020-09-15
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 1 | 1 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 1 | 1 |
閲覧指数:989.9
2024/11/23 18時44分20秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。
言葉は使い方によって薬にも凶器にもなるとよく言いますね。彼岸花が小さく揺れて赦してくれてるようなそんなイメージを抱きました。
1