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排除
今朝、洗面所で歯を磨いておりますと 足元に一匹のゴキブリをみつけました 黒い身体のもぞもぞと もぞもぞと生きているものでした 殺すのも忍びないとちり紙で優しくつつみ ドアの外へ放り出しておきました どこか知らないところで幸せになってください 僕の知らないところで 言葉は権威化しますよね 議論の場で、内向的なあまり うまくしゃべれない人がいます ロゴスの強い人は 自身の言葉を押しつけるべきではありません あ、今、自分は外側にいる と、はっきりわかってしまう瞬間がある あ、僕は仲間じゃなかったんですね あれ、なんかすいません、勘違いしちゃって あなたはわたしたちと違って才能があるから あなたはわたしたちと違って美しいから あなたはわたしたちと違って純粋だから あなたはわたしたちと違って 夕方、家に帰りますと ドアの前で、ゴキブリが一匹死んでいました 黒い身体の静かに 静かに死んだものでした 家に帰ろうとしたんでしょうか一日中 一日中、絶対に開かないドアの前で もぞもぞと、帰ろうとしたんでしょうかゴキブリの 小さく弱い手足
排除 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2654.7
お気に入り数: 3
投票数 : 0
ポイント数 : 10
作成日時 2020-06-29
コメント日時 2020-07-07
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 3 | 3 |
エンタメ | 5 | 4 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 10 | 9 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1.5 | 1.5 |
エンタメ | 2.5 | 2.5 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 5 | 5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
&さんへ 初めに声に出して読んで「お、いいな」と思い、黙読してさらにいいなと思いました。 > 家に帰ろうとしたんでしょうか一日中/一日中、絶対に開かないドアの前で/もぞもぞと、帰ろうとしたんでしょうかゴキブリの/小さく弱い手足 とくに最後の連の文章の区切り方が好みです。一連目の三行目と四行目ですでに「これは」という期待感があって、最終連で「やっぱりいいなー」ってなりました。
1ゴキブリ描写と、人間世界の話しの脈絡が、若干曖昧な様な気もするけれど、自分という存在を主役にすれば、分かりやすく成立している詩と思いました。 只、私にはゴキブリという存在が強烈すぎて、最初ゴキブリの物語しか頭に入って来ませんでしたから、何度も読み返しました。物哀れさに、少しうるっと来ました。
1ありがとうございます。最後の連の区切り方、というか形式は個人的にとても好きな形なので、褒めていただけて嬉しいです。
0コメントありがとうございます。ゴキブリと人間世界とが曖昧にみえるのは半ば意図的なものです。題名のとおり「排除」がモチーフになっていますので、ゴキブリと人間とは互いが互いの暗喩になるような関係のつもりで書きました。
0とても面白い詩でした。ただ、僕的には最後のオチがあんまりしっくりきませんでした。最終連手前の「黒い身体の静かに/静かに死んだものでした」というのは「おお」とかなり迫ってくる死の表象だったのですが、それに対する感動が題名の通りの『排除』になっている感じがして、逆にそこを裏切ってほしいと思ってしまった一読者としての自分がいました。つまり、排除は仕方ないことだけれども、それを越える瞬間が実はあるのだ、という詩人の気づきを表明してもらいたかったと、おこがましくも自分の価値観を押しつけてしまうような詩でした。 とはいえ、とても、感動的であったのは確かです。ありがとうございました。
1ありがとうございます。越える瞬間、難しいですね。そもそもあるのか、それはどういったものかというのがそれぞれまた別の詩になりそうです。「排除」三部作を書いてもよいかもしれませんね。
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