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今日の天気は雨
仕事場での昼休憩の時に、私はいつかの飲み会での出来事を思い出した。 友人の女性が、社会的弱者が自身の生活のために犯罪に至るまでの、様々な事例をいくつか紹介していた。僕はその話から、「法律は善を創造し得ない」というありきたりな真理にぶつかった。 真の善とは何だろう。それは例えば、ライオンのようにたゆむことなき早瀬の奔流か。 *** 雨はムジョウムジョウと降っていた。我が家の窓はカタコトと音を鳴らし、ホームステイのカミ君は雨の激しさに驚いていた。 僕もあんまりうるさいと思ったから、我慢ならずに外へ飛び出して、雨に向かって大声で叫んだ。 「お~~~い、雨!!! どこから君は来たんだい? 皆も迷惑がっているから、早く止んでくれないか?」 すると雨は飄々とした顔でこう嘯くのだ。 「僕たちは雨なんかじゃないよ。ただの水さ。 雨はただの水滴で、水滴はただの水の集まり。僕らは36億年の昔からずっと、チャキチャキのH2Oなんだぜ。 ずーっと水。過去でも現在でも未来でも、水。僕らはどこからも来ない、どこにも居ない、どこへも行かない。だって、僕らは透明だから。透明なものは全てになれるから、水は水以外の全てと、何の違いもないのさ」 僕はいよいよ腹が立ってきて、ムキになってがなりたてた。 「じゃあどうすればおまえらは黙ってくれるんだよ!!!!!!」 すると売り言葉に買い言葉と言わんばかりに、最期に水は、次のような捨て台詞を残して消えた。 「常識を忘れることと、ボーっとすることと、笑い飛ばすことさ。そうすれば全てが一つになるぜ。はっはっはっはっはっはっはっはっ……」 雨が笑い声は竜巻を引き起こした。 言い返す間もなく、高速の空気の渦に巻き込まれ、どこかへ飛ばされていくうちに、僕は気を失った。 *** (……現実~現実~、終点、ですっ……) 「終点ですよぉ!」 仕事帰りの電車の中、車掌に起こされて、やっと目を覚ました。最寄り駅が終着駅だと、乗り過ごす事がないからとても便利だなぁ。
今日の天気は雨 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1002.7
お気に入り数: 1
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ポイント数 : 0
作成日時 2020-06-12
コメント日時 2020-06-12
項目 | 全期間(2024/11/24現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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技巧 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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- 作品に書かれた推薦文