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さいわい
それは 世界で最も美しくて 最も儚い 自己満足のカタチ 「お人好しなんだよ、君は」 クラスメイト 30名の前で吐かれた先生のため息は 僕を 喜ばせた 「ありがとうございます!」 目の前の困っている人になら 猪突猛進で助ける 相手が悪くても 自分のせいにしてしまう そんな僕は先生に 濃度100%の感謝を伝えたけど 先生は 感謝の汁 一滴残らず振り払った 「あのな、お人好しにはなっちゃいけないんだ」 誰かが助かるために 自分が死ぬか 自分が助かるために 誰かが死ぬか そんな選択を迫られたら 僕は呟いてしまう 「僕が 助からないのはいいけど あなたは 僕のために死なないだろうね」 自分はいいけど 他人は信じられない どこまでいっても 他人を信じきれない そんな身で 死ぬのか? カムパネルラは考える あの時 ザネリを救うために 死ねた原動力は 結局 自分が「さいわい」になるため だったからだ どこまでいっても 「自分の身」は 切り離せられないんだ 彼は目を閉じて 「良い人」として 川床に眠る 求めていないのに 救けのような何かを 与えられた人の はた迷惑そうな 目 無垢な良心をギタギタに引き裂く音が 聞こえ その目 音 に怯える 僕の姿が まるで合わせ鏡のように 無数に見えた そこで気づく 自分が求めていたのは 相手の姿ではなく 相手を救けきった 自分の姿だと 先生 僕はやっと お人好しの真理に気がつきました ああ 数歩前で 先生は ニヤニヤしながら 残像が液体状に揺れる 教師独特の手つきで 僕に拍手を送ってる 「よく気がつけたね」 ああ 僕は彼の敷いた 思想のレールに乗っかったんだ より“良い”方向に進もうと でも先生 この世には 模範的な 悪魔として生きていこうとする人が あまりにも 多すぎるのです 僕は カムパネルラと語り合いたい 「どう、誰かのさいわいになった気分は?」 「いい気持ちだよ」 今 世界で最も甘い汁が 目からポロポロと 溢れ出て
さいわい ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1958.6
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 46
作成日時 2019-09-17
コメント日時 2019-09-19
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 12 | 12 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 9 | 9 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 11 | 11 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 14 | 14 |
総合ポイント | 46 | 46 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 4 | 3 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 3 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 3.7 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 4.7 | 5 |
総合 | 15.3 | 10 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
ジョバンニとカンパネルラの関係性について あなたの独断と偏見を聞きたいです。 レール、カンパネルラ。銀河鉄道の夜。 死は甘えですか? あなたの意見に興味が芽生えました。 我儘ですが、わたしは答えません。 率直な言葉が聞きたいだけなのです(笑)
0こんにちは。 偶然にも3日前、「つつみさんはお人好しなんだよ。」 と言われて、とても不快な気持ちになっていました。 モヤモヤと過ごしていたところに、 るかおさんのこの詩を見て思いました。 私は相手のためにやったのではなくて 「自分のためにやったのだ。」 と思えば、誰に何と言われようと 不快な気持ちにはならないような気がしました。 その一方、相手を信じてないから 「お人好し」になって手を出しちゃうのかなと いう思いも否めません。 それはこれからの課題なのかなと。 しかし、以前、94歳になる祖母が ぽつりと呟いたのです。 「私が今一番辛いのは、誰の役にも立たないことね。」と。 確かに、誰かの役に立つことで幸せを感じることって そんなに珍しいことでもないのかな、とも思ったり。 色々なことに想いを巡らされる詩でした。
0窓辺景色さんコメントありがとうございます。 僕は、ジョバンニとカムパネルラ二人の自己犠牲心を美しく感じます。銀河鉄道は特に、さそり座の話が好きで、小さい頃のプラネタリウムで観たさそり座の話が強く印象に残っています。 この詩は、きっとカムパネルラは「自己犠牲から、身を投じた自分の姿に浸る心を切り離せない」と悟りながら溺れていったんじゃないか、という個人的な推測が浮かんで書きました。実際、彼は誰かにとっての「さいわい」になる事を欲して死にました。さいわいになった自分の姿を求めたカムパネルラと同じように、僕も「偽善的と言われる行為」に含まれる自己満足を求めていたと、最近銀河鉄道の夜を再読して気がつきました。 しかし、カムパネルラの死は甘えてはいないと思っています。その自己満足の存在に気がついて、それを踏まえた上で誰かのさいわいになれることが美しくて、大事だと思います。「先生」のような存在のように、自己満足や利己的な感傷に気づいた先に進もうとせず、他人を偽善だと諭すことこそ、真に己しか見えていない偽善だと考えさせられました。
0すみません、先生とは、この詩にでてくる「先生」のことです
0つつみさん、コメントありがとうございます。 それは辛かったですね。お人好しという言葉自体、良いのか悪いのか、一言だけじゃわからなくて、言葉との距離感を掴みにくいような気がします。 つつみさんの、お人好しの自分の姿を受けとめた上でお人好しになる、という考えが素敵だと僕は思います。
0この詩を読んだ後、私も再再度、銀河鉄道の夜を読み直しました。子どもの時に読んだ時と大人になって読むのとは不思議と感覚が違うんですよね。有名な事なんですけど。 丁寧に返答して頂けて良かったです。るかおさんの素直な言葉が聞けたような気がします。ありがとうございます。共感する部分もあるし似た所があるのかもしれません。 叙情性3点 技巧2点 構成5点を入れさせて頂きました。○
0窓辺景色さん 銀河鉄道の夜を再読してもらえるほど熱量をこめて読んでもらえて大変嬉しいです。ポイントもありがとうございます。
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