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女性像/断片
阿呆が集いて歌を鳴く 止まらぬ寂が耳を掻く 旋律曰く 曇天の下 この空き地に敷き詰められた詰草 クシャクシャに潰して寝ててください、と。 / / / 爪を真っ青に塗って 空を飛びたいと唱えてみた 気分だけが浮いていた / 飴玉ひとつ、かろろっく ざらつく舌ざわり 何か思い出しそうな / 油断に掌底潜り込む / キッチン喫煙室 匂いも消えてゆけ / 気持ち悪い。 頭蓋の裏にプロジェクタ 銀幕に色薄まった海の映画 全部覚えている 私が磯浜の石に座っていた 荒磯の潮を見ていた / ほどくなら頭の渦を 青波の髪に梳いてよ / / / 大昔のパンプスに貧乏風が開けた穴 面白がった草の葉がちょっかいを出す 貧乏神が切った傷 捲れてしまってだらしなさに輪をかける このパンプス 草臥れ果てて昇天の後 感謝の層雲となって貧乏雨をふらせてくれそう / / / 駄目な女がつるむなら 相手はやはり駄目なやつ 薄暗き 林の高い木の枝へ ふたり絡まり伸びようか 螺旋を二人でつくろうか / 君の愛の名は不幸 果のない濃藍の病気に塗れているのなら どうぞ私を切るといい 血を以て私たち他人となりましょう / 日々とは採石場のことらしい 切り売りされているのものは、 / 苦楽薬毒 偏れば顚落 努々、何事にも酔い過ぎぬよう / 嘘つきが最後に味わうものは孤独 誕生日に必ず味わう程度には私の好物 / / / 蛙、雨を乞いて鳴いている
女性像/断片 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2354.6
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 59
作成日時 2018-07-10
コメント日時 2018-08-14
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 12 | 5 |
前衛性 | 8 | 3 |
可読性 | 6 | 0 |
エンタメ | 4 | 1 |
技巧 | 11 | 6 |
音韻 | 6 | 0 |
構成 | 12 | 5 |
総合ポイント | 59 | 20 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 6 | 6 |
前衛性 | 4 | 4 |
可読性 | 3 | 3 |
エンタメ | 2 | 2 |
技巧 | 5.5 | 5.5 |
音韻 | 3 | 3 |
構成 | 6 | 6 |
総合 | 29.5 | 29.5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
はじめまして、先ほど初めてこの掲示板に来たため、失礼があればすみません。 情景描写と感情のうまくまざった流れと言葉に惹かれ、コメントさせていただきました。 なにかモデルの女性がいて、その人と普段の女性観(美醜混ざった、どこか不特定な感覚)を足したものなのかなと感じました。 女性、切り売り、「駄目な女がつるむなら相手はやはり駄目なやつ」というどこか不穏で、心中めいた気配のなかに、どこか美しさを感じるのは、不穏の中にこそ女性らしい、危うい綺麗さが確かにあるからでしょうか。 個人的に好きな詩でした。長文、失礼いたしました。
0※このコメントは7月選評です。作者様でなく閲覧者に向けて書いています。※ この詩にはまいりましたね。こんな好みどまんなかの、脳みそしびれて使い物にならないほど魅力的な筆致には、めったにお目にかかりません。下記は「わたしがこの詩の核心と思う部分の読解」ですが、ただでも悪い頭がこんなにしびれちまって、果たしてまともに読めているのかどうか。 ●読解(というのは読者の表現であり、作者様とは関係ありません) スラッシュの多用で連ねられた、断片的で自虐的な回想。語り手は「かつて堕胎を経験した未婚の女性」と思われます。流産と解釈することもできますが、ここではより重苦しい堕胎を読解前提に想定します。 失ったわが子や愚かだった恋にまつわる、語りたくないもう思い出したくもない抒情が、迂遠な比喩の行間に、すさまじい密度で凝縮されています。 冒頭の【空き地に敷き詰められた詰草】は、もとが梱包の詰め物だったので詰草と名付けられました。 出だしの情景はその詰草のイメージから、「世間知らずの箱入り娘」や「開封された贈り物」などの濃密な含意を伴って、「からの子宮」を示唆します。 それは「母になれなかったかつての語り手自身」への呪詛です。【阿呆が集いて歌を鳴く】そのように愚かだった恋の果てに、語り手はわが子を失いました。その感慨がここでは【止まらぬ寂】と呼ばれ、終盤では【孤独】と呼ばれます。 【薄暗き/林の高い木の枝へ/ふたり絡まり伸びようか/螺旋を二人でつくろうか】 これは愚かだった恋の高ぶった性交と、その果ての妊娠(遺伝子の二重螺旋)の比喩。イェイツの『デアドラ』を思わせる、悲恋と死の匂いをどっぷり孕んだ、不吉な高揚です。 【血を以て私たち他人となりましょう】 こちらは決別と堕胎の比喩。語り手は堕胎をもって、駄目な男ともわが子とも【他人】になったようです。 このようにこの詩の詩句は、含みがきわめて多く、文字通り重いです。語りたくないことを語る言葉だから、切り詰められ凝縮されています。 【嘘つきが最後に味わうものは孤独/誕生日に必ず味わう程度には私の好物】 この【誕生日】は、表面的に読んでも意味は通りますが、真意は「失ったわが子の命日」でしょう。生むことのできなかったわが子へのやるかたない思いを、語り手はこんな皮肉でしか表現できません。かの女の本音は言葉にも、涙にすらもなりません。 【蛙、雨を乞いて鳴いている】 涙も涸れ果てたような疲弊の重苦しい抒情が、すさまじい密度で凝縮された結句です。人も蛙も恋を謳歌する夏の夜の孤独、涸れ果てた涙が飽和したような湿気、わが子が上げることのできなかった産声。漏らせない語り手の本音。悲しんでいないふりを装う【嘘つき】。人に言えないような話は、このようにしか歌えないということ。 ●感想 特に冒頭がかっこよすぎるのですよね。初見一発目から「箱入り娘をこんな洒脱に皮肉る比喩を、わたしは初めて見た。」って間違った感動に打たれたせいで、再読三回目くらいまではどこ読んでも「わたしもこんな渋い女性になりたいなー」って最悪に的はずれな感想しか湧いて出ず。自分の悪い頭との厳しい戦いでしたが幸せでした。好みどまんなかの詩は、読者をメロメロにし決定的にアホにする劇薬です、が最高に幸せです。 わたしがメロメロのアホだからまともに読めないだけで、難解でも奇天烈でもありません。読めば読むほど「この詩はこのようにしか書かれ得なかった」という必然性の感じられる、説得力のある作品です。メロメロ病が治るまで読解どころでないことも、なん度も再読を楽しめるのだから美点と言えましょう。傑作です。
0>ほどくなら頭の渦を >青波の髪に梳いてよ ここが好きです。 この部分に想像力を刺激されました。僕は隠喩というものが苦手で、読み解くより先に(詩的)実在として受け入れてしまうのです。 海と混交した母神が現れましたね。 ここにつながる男女の恋模様には、逆に強い関心が持てなかったし、事の顛末を充分捉える力も僕にはありませんでした。
0三木宗仁さん、お返事が一ヶ月以上も遅れてしまってすみませんでした。読んでくださってありがとうございます。 モデルの女性がいるわけではありませんが、私の中にいる女性というわけでもありません。 彼女はただただ愚か者なんですよ。きっと。作品が生まれるところを歩いてた自分が通りがけにたまたま見つけたのです。 空き地で窮屈そうに寝てる彼女を。 不穏さの中に女性らしい綺麗さがある・・・というのは、そうなのかもしれないですね。 魅力という字には鬼がいますしね。そういうものなのかもしれないです。 とかなんとか。 好きだと言ってくださってありがとうございました。
0澤あづささん、読んでくださってありがとうございます。 大賞候補に選んでくださってありがとうございました。お礼は7月分選評の方に書かせていただきました。 べた褒めしてくださってて恐縮至極です。 どうかメロメロのままでいてくださいませ。
0右肩ヒサシさん、読んでくださってありがとうございます。 私も詩を読み解くことについては得意ではないです。 それで良かったり、「いや良くはないぞ、ちゃんと読めよ」ってなったりします。 気に入ってくださってありがとうございました。
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