どこか遠くで誰かが落とし物をした
ような音を聞いた
小さなクリップみたいな
物が
絨毯の上に落ちたような
音を聞いた
僕はそれを拾って
落とした人に声をかけ
渡そうとしたが
すぐその人は
閑散の中に見えなくなった
人は人込みの中に見えなくなる
のと同じように
何もないところに消え入ることも
ある
初めて行った町で
たまたま渡った歩道橋
の上はそれほど静かで
誰もいなかった
心の中で
落とし物を拾った
遠い遠いところで落ちたもの
らしかった
でも心はどこまでも届く
空虚な想像の
中に見失われた落とし主が
誰かは知らない
僕はその
クリップみたいに軽い物を持ったまま
歩道橋を渡り終え
往来に出ると
ちょうどバスが来て
それに乗って駅に向かった
僕も何か
落とし物をしたような
気がした
きっと誰かが拾う
でも戻らない何か
を落とした気がした
作品データ
コメント数 : 3
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作成日時 2023-05-19
コメント日時 2023-05-23
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
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エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
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2024/11/23 19時04分36秒現在
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フロイトかユングの夢分析にかけられるような内容の、少し夢のような作品だと思いました。歩道橋には僕も印象に残っている場所があります。解釈をすると、日々忘れてしまう大事なことの不安が現れているのでしょうか。
0こんにちは。 少し寂しげで、何か意味深長な感じの詩ですね。 誰かが落とした小さなクリップのような落とし物。 初めて訪れた町の誰もいない歩道橋。 何かを表した心象風景のようですね。 その小さな落とし物とは、我々が知らぬ間に忘れてしまったものでしょうか。 それとも知らぬ間に他人に与えた小さな影響のことでしょうか。 袖振り合うも多生の縁という言葉もありますが、我々は様々なものを落としたり拾ったりしながら、常に少しずつ変わりつつ生きてゆくものなのかもしれないと、そんなことをこの詩を読んで思いました。
0文章の途中で改行を用いリズム感を得ている感じが好きです。僕も好んでします。 最終行で改行を用いない事で、終わりがないような印象を受けました。 物語はまだまだ続いていくような、不思議な詩ですね。
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